土木研究所 構造物メンテナンス研究センター

アルカリ骨材反応が生じたPC橋の調査、診断と対応事例

ASRによりPC桁に沿って橋軸方向のひび割れが生じたPC中空床版橋への対応事例を紹介します。

このPC橋では桁側面および下面全面、舗装面の一部に橋軸方向のひび割れが確認されました。桁側面のひび割れは、幅が2.0mm以上のものもあり、目視でひび割れを挟んだコンクリート表面の目違いが確認されたことから、曲げやせん断、収縮等に伴うひび割れではなく、ASRに起因した膨張によるひび割れが疑われました。(写真-1、2)

採取コアで骨材の輪郭部に白色の滲出物を確認(写真-3)し、また、弾性係数が約6割まで低下していたことから、ひび割れの原因はASRと推定されました。元素分析や顕微鏡観察などの調査を行い、白色の滲出物はケイ素を主成分としたゼリー状のゲルであることが確認されたことから、ひび割れの原因はASRと判断しました。

ひび割れ進展や弾性係数の低下により、部材断面の一体性損失やたわみ増大による安全性と使用性の低下が懸念されたため、荷重車両を使用して静的載荷試験を行いました(写真-4)。その結果、荷重レベル範囲内での最大たわみ量と面的なたわみ分布は、いずれもひび割れが生じておらず弾性係数も低下していないと仮定した計算値の半分程度で、設計で想定する剛性が概ね失われていないことが分かりました。

載荷で線形挙動を逸脱する動きがなかったこと、複数個所でひび割れの開きやずれがなかったこと、既に8tに重量規制されており、8t車が橋梁上に満載の場合でも本載荷試験より安全側の載荷条件となることから、現行の重量規制を継続することとしました。

併せて、ASRは水の介在により反応が促進されることから、雨水の供給遮断を目的とした床版防水、伸縮装置取替による止水機能の回復、ひび割れ補修、コンクリート表面保護等を実施しました。

写真-1 PC桁側面のひび割れ状況 写真-1 PC桁側面のひび割れ状況
写真-2 舗装面とPC桁上面のひび割れ状況 写真-2 舗装面とPC桁上面のひび割れ状況
写真-3 コア断面の観察 写真-3 コア断面の観察
写真-4 荷重車両による静的載荷試験 写真-4 荷重車両による静的載荷試験

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アルカリ骨材反応が生じたPC橋の調査、診断と対応事例、土木技術資料、Vol.55、No.7、pp.55-56、2013.