土木研究所 構造物メンテナンス研究センター

PC鋼材の腐食への対応

ポストテンション方式のプレストレストコンクリート橋(以下、PC橋)では、打設前に予めシースを内部に配置し、コンクリート硬化後にPC鋼材を挿入・緊張することでプレストレスを導入します。その後シース内に、PC鋼材とコンクリートの付着確保及びPC鋼材の防食を目的としてグラウトを充填しますが、充填が不十分だとそこから塩分を含んだ水が浸入し、PC鋼材が腐食・破断する原因となってしまいます。
セグメント工法によるPC連続箱桁橋において、補修工事中にA1-P1間の第8ブロックの床版下面に浮き・ひび割れ・変色等が発見され、はつり調査を行ったところ連続ケーブルのPC鋼材の著しい腐食が確認されました。非破壊検査やドリル削孔等による調査の結果、建設時のグラウト充填が不足していたこと、及び供用後に桁端部の開口部や桁内を通る排水管の破損部を通じて路面水が桁内に供給されていたことが原因と分かりました。明らかに変状が発生していた箇所は一部のみでしたが、施工条件が同じである場合他の箇所でも同様の不具合が生じている可能性が高いため、橋全体にわたり調査を行ったところ、不具合の発生していないP1橋脚上の張出しケーブルでもグラウト充填不足とPC鋼材の破断が確認されました。

橋梁全景 写真-1 橋梁全景
PC鋼材配置図(A1からP1-P2の中央まで) 図-1 PC鋼材配置図(A1からP1-P2の中央まで)
張出しケーブルの破断状況 写真-2 張出しケーブルの破断状況

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1) PC鋼材の腐食損傷への対応事例―妙高大橋のグラウト未充填と鋼材腐食の調査―、土木技術資料、Vol.54、No.5、pp.50-51、2012.
2) 木村嘉富,田中良樹,花井拓:コンクリート道路橋メンテナンス技術高度化への取組み-CAESAR、臨床研究、載荷試験、検査・診断技術-、第40回PC技術講習会、2012.