土研ニュース

「バイオ天然ガス化装置」が経済産業大臣賞を受賞しました


神戸市東灘処理場に設置された
バイオ天然ガス化装置

バイオ天然ガス化装置のフロー


こうべバイオガスステーションでは
市営バスなどにバイオ天然ガスを供給
(後ろは下水汚泥を処理してガスを回収する
嫌気性消化タンク(神戸市東灘処理場))



優秀環境装置表彰式の状況
(写真提供:(社)日本産業機械工業会)

 土木研究所が、神戸市、(株)神鋼環境ソリューションとの共同研究により開発した下水汚泥消化ガスの精製装置「バイオ天然ガス化装置」が、第35回優秀環境装置表彰において経済産業大臣賞を受賞しました。

<下水処理場における課題>
 下水処理場では、毎日、家庭や事業所などから発生する汚水を浄化して、河川や海に放流しています。その際に、下水に含まれる汚れや水の浄化に重要な役割を果たす微生物の残骸などは、下水汚泥として水と分離されます。この下水汚泥を処理する過程で発生する消化ガスには、メタンガスが6割程度含まれており、再生可能エネルギーとして地球温暖化対策の観点から注目されています。しかし、これまでは、ガスのメタン濃度が低いうえに、不純物を含んでいることなどから用途が限られており、下水処理場内で利用しきれないガスは焼却処分されていました。

<バイオ天然ガス化装置とは?>
 私たちは、下水汚泥消化ガスの質を高めることで有効利用の用途をさらに広げようと考え、「高圧水吸収法」という技術を用いた実証試験を行い、メタンガスの濃度を97%以上にするとともに、余分な不純物も取り除いて、都市ガスとほぼ同じ程度に精製する国内初の高機能な「バイオ天然ガス化装置」の実用化に成功しました。
 「高圧水吸収法」は、水に溶けにくいメタンガスとそれ以外の不要物質である二酸化炭素や硫化水素などの水への溶けやすさの違いを利用した技術です。ガスを高圧にすると、水への溶けやすさの差がさらに大きくなることを利用して、メタンガスの純度を高めます。水と電気だけを使ったシンプルな精製方法です。また、この水は下水処理水を活用することが可能です。

<下水が市営バスの燃料に変身?!>
 こうして精製されたガスは、天然ガス自動車の燃料として利用することが可能です。神戸市東灘処理場で発生した下水汚泥消化ガスは、隣のこうべバイオガスステーションで市営バスや民間の商品配送車などの燃料として活用されています。下水から得られたバイオガスが自動車燃料に変身して活用されることで、その分ガソリンや天然ガスの消費削減につながり、地球温暖化対策にもなっているわけです。

<表彰式が盛大に行われました>
 平成21年6月15日、東京で(社)日本産業機械工業会による第35回優秀環境装置表彰の表彰式行われました。この制度は、国内や地球規模の環境問題に対応するための優れた装置を選定して表彰するもので、今回、バイオ天然ガス化装置は経済産業大臣賞を受賞しました。当日は土木研究所の大石理事をはじめ本技術の開発者の出席のもとで、盛大に表彰式が行われました。
 リサイクルチームでは、今後ともこうした地球環境保全などに役立つ技術開発に努めていきたいと考えています。


(問い合わせ先:リサイクルチーム)

たきかわエコカーフェスティバルに参加しました


BDF(バイオディーゼルフューエル)公用車
滝川市所有

CNG(圧縮天然ガス)自動車
寒地機械技術チームがガス精製技術を開発
(北海道開発局滝川道路事務所所有)

参加者から質問を受ける研究員

 平成21年6月21日に北海道滝川市で「たきかわエコカーフェスティバル(主催:滝川市)」が開催され、寒地機械技術チームと道央支所が参加しました。
 この催しは環境省が実施している「燃料電池自動車啓発推進事業」により、滝川市に燃料電池車ホンダFCXクラリティが貸与されることから、多くの市民に燃料電池自動車の魅力に触れて頂くため6月15日〜21日まで行われた「たきかわ燃料電池自動車ウィーク」の最終日を飾るイベントとして行われたものです。
 イベントでは燃料電池自動車のほか、滝川市の廃天ぷら油で走るBDF(バイオディーゼルフューエル)公用車、量産型ハイブリッドカー2車種が展示され、寒地機械技術チームではCNG(圧縮天然ガス)自動車を展示しました。
 このCNG自動車は、生ゴミから発生するバイオガスで動く自動車であり、寒地機械技術チームが燃料となる圧縮天然ガスをバイオガスから精製する技術を開発しました。そして、北海道開発局の道路パトロールカーとして、日々の道路巡回業務に使用しています。バイオガスは中空知衛生施設組合(北海道:滝川市、芦別市、赤平市、新十津川町、雨竜町)が管理運営する広域ごみ処理施設(リサイクリーン)で、日々生ごみ(ガーベイジ)をメタン発酵処理することにより発生しています。そのガーベイジ・バイオガスを精製圧縮充填装置(国土交通省北海道開発局保有)によって、CNG対応車輌の燃料として活用しています。
 参加者からは「生ゴミから燃料ができるんですか」「ガソリンとCNGの切り替えはできるのですか」「馬力はガソリン車と変わらないのですか」などの質問が出され、研究員は「生ゴミから発生したガスが燃料です」「ガソリンとの切り替えもできます」「馬力はガソリン車と比べて30%ほど落ちますが、走行には問題ありません」などと説明をしました。また、生ゴミからできた肥料のサンプルを無料配布し、参加者から好評を得ました。
 寒地機械技術チームでは、今後は冬期間運用における課題を抽出し、改善策を検討することにより、北海道におけるガーベイジ・バイオガス燃料の導入モデルを提案することとしています。



(問い合わせ先 : 寒地土木研究所 寒地機械技術チーム、道央支所)

   

ランブルストリップスが新技術活用システム(NETIS)推奨技術に唯一選ばれ、国土交通省の実地調査が開催されました
 〜 全国への普及が期待される 〜


平澤主任研究員の講演

施工方法・機械の説明

施工直後の状況

ランブルストリップスの体験走行体験走行

 平成21年7月8日(水)に、寒地土木研究所構内において国土交通省の平成21年度第1回歩掛・機械費作業班会議が新技術活用システム(NETIS)推奨技術「ランブルストリップス」の実地調査を行いました。本会議は、国土交通本省及び各地方整備局の担当者が参加し、土木工事標準歩掛や請負工事機械経費積算要領等を協議する場で、今回は25名が参加しました。歩掛や積算要領とは公共事業を発注する上で必要な基準となるものです。

 ランブルストリップスは、平成21年度に公共工事等における新技術活用システム(NETIS)の「推奨技術」に全国で初めて選定されました。有用な新技術であるランブルストリップスの活用促進のため、今回実地調査が開催されました。

 この「推奨技術」とは、国土交通省が公共工事等に関する技術の水準を一層高めるため、各地方整備局等から推薦された画期的な新技術を対象に、国土交通本省に設置されている新技術活用システム検討会議(有識者会議)において、選考委員の全員一致が必要とされる厳しい審査を経て選定されるものです。この「推奨技術」に選定されると、総合評価方式による入札審査や工事成績評価において加点の対象とされ、当該新技術の普及啓発や活用促進等が図られることになります。
 「推奨技術」に選定されたことは、寒地土木研究所が開発したランブルストリップスが高く評価され、かつ、本年度において国土交通省として最も全国的普及を図る新技術として位置づけられたことを意味します。

 実地調査は、正面衝突事故対策としてのランブルストリップスの研究開発や施工方法、普及状況、整備効果の検証等について、当所寒地交通チームの平澤主任研究員による講演の後、構内でランブルストリップスの施工が行われました。その後、会議参加者は試験車両に搭乗し、ランブルストリップスの音と振動を体感しました。今回の知見と経験が各地方整備局に伝えられ、交通安全対策としてのランブルストリップスが北海道以外の地域で普及することが期待されます。
 なお、ランブルストリップスを実際の道路に施工した後の画期的な効果を以下に示します。


ランブルストリップスの効果

※ランブルストリップスの詳しい情報はこちら
http://www2.ceri.go.jp/rumble/index.html

(問い合わせ先:寒地土木研究所 寒地交通チーム)

   

地理空間情報フォーラム2009への出展


地理空間情報フォーラム2009の開幕
(地理空間情報フォーラム事務局より提供)

データ標準化について説明

様々なデータを扱う工事のイメージ


データが標準化される仕組みのイメージ

 地理空間情報フォーラム2009が6月17日から19日の3日間、横浜市にあるパシフィコ横浜にて開催されました。本フォーラムでは、測量、地図作成、調査・設計、建設工事など地理空間情報に関わる分野のシンポジウム、企業や関連機関による地理空間情報システム等の新技術の展示や研究成果発表会などが行われ、盛況なイベントとなりました。

 土木研究所では、道路や堤防等の土木工事をスムーズに行うための情報化施工と呼ばれる技術と、土木工事に利用するデータの標準化に関する技術展示を行いました。
 情報化施工は、土木工事に電子データを活用することで、生産性の向上や品質の確保を図るものです。情報通信技術(ICT)を活用することで、土木工事の様々な工程から得られる電子データを活用して効率化・高精度な施工を実現するシステムです。
 ダム工事などの大規模工事や一部の道路工事では、情報化施工の取組が既に進められております。しかし、一定以上の規模や一つの現場だけで利用することを前提として開発されたシステムが多いため、他の土木工事現場での利用は考慮せず、使用するデータ形式もバラバラで、転用ができないものでした。
 そこで、システムを広く普及・運用していくためには、どの現場においても、建設機械、測定装置、現場情報システムの間でデータを容易かつ確実に交換することが必要となります。土木研究所では、多くの公共工事で実施されている堤防工事や道路工事などの盛土工と呼ばれる工事を対象工種として、「データ交換標準」(標準的なデータの流れやデータ項目の構築)を定めることによって、広範囲な情報流通を可能とし、今以上の効率化・高精度な施工を実現する研究を進めてまいりました。
 地理空間情報フォーラム2009での技術展示では、土木工事の作業手順に対応したシナリオとして、データの交換場面、手順、情報項目を整理した盛土工における具体的な情報モデル、データ要素の定義を記述したデータ辞書について展示、紹介を行いました。
 なお、本成果に基づき、ISO15143 Worksite data exchange「Part1:System architecture」「Part2:Data dictionary」をとりまとめ、2008年12月にISO(国際標準化機構)事務局より承認を受けました。



(問い合わせ先:技術推進本部、先端技術チーム

   

寒地土木研究所一般公開を行いました


破堤模型実験の様子

毎年恒例のクイズラリー

6月29日地元ラジオ局(カロス)出演の様子

 毎年恒例の寒地土木研究所一般公開を7月3日(金)、4日(土)に開催しました。「しってなっとく 北の知恵」をテーマに14の研究チームと1ユニットが趣向を凝らした公開を行い、約1,300名の方々に来場いただきました。
<技術者のための研究説明コーナー>
 今年度、初めての試みとして、土木の専門的な技術者の質問に詳しく答える「技術者のための研究説明コーナー」を設けました。7月3日13時から15時30分という短い時間でしたが、民間企業などから技術者が訪れ「重金属汚染対策の試験方法はどのように行うのか」などの専門的な相談があり、これまでの研究成果の紹介や課題点を説明するなど、対応に追われていました。
<体験・実演プログラム>
 今年も各チームで体験・実演プログラムを行い、多くの来場者に参加していただきました。植物の生長に必要なリン酸濃度を測り、農業に適した土壌を体験者に理解していただく実験では、専門的な実験器具を使うことにより、体験者がミニ科学者気分を味わうことができ、大変好評でした。模型による「破堤模型実験」では、堤防が決壊し土砂を含んだ洪水が民家に押し寄せる様子をリアルに再現することで、来場者に洪水の恐ろしさや堤防の必要性への理解を深めていただきました。
 それ以外にも多くの体験・実演プログラムを実施し、来場者から好評を博しました。
<パネル展示・ビデオ上映>
 社会資本整備の重要性を来場者に理解していただくため、今年は北海道開拓初期の様子を撮影した貴重な映像を上映するとともに、札幌市が原野から現在の180万都市に成長していく様子を写真パネルで紹介しました。来場者には大変興味深い様子でした。
<その他>
 一般公開が6月24日と6月29日に地元ラジオ局に取り上げられ、寒地技術推進室や研究チームの上席研究員が生出演し、一般公開への参加の呼びかけや研究所で行っている研究内容、研究にかける熱い思いを語りました。


(問い合わせ先:寒地土木研究所 企画室、寒地技術推進室)

   

平成21年度 土木研究所研究評価委員会外部評価委員会の開催


表−1 分科会の構成および委員会出席者


委員会の様子

寒地土木研究所 構内施設見学の様子

 6月初旬〜中旬にかけて土木研究所研究評価委員会外部評価委員会(以下、委員会)の分科会(以下、分科会)が、6月26日に委員会(委員長:京都大学大学院 田村武教授)が開催されました。
 分科会は、対象の分野ごとに8つの分科会から構成されています(表−1)。分科会では各分野の重点プロジェクト研究のプロジェクトテーマ全体の進捗状況報告、及び研究課題の事前評価、中間評価、事後評価について審議されました。
 委員会では、各分科会での審議内容報告およびその報告に対する討議が行われ、最後には、「重点プロジェクト研究及び研究活動全般について順調に進捗している。委員会、分科会の評価、議論を踏まえて引き続き研究を進めて欲しい。」との講評をいただきました。また、各評価委員の方々から、土木研究所に対して「国際性」「土木研究所の存在感」「研究の方向性と研究マネジメント」の観点から様々なアドバイスをいただきました。委員会は例年、東京都内で開催されていましたが、今年度は札幌にある寒地土木研究所の講堂にて開催され、委員会終了後は委員の方々に寒地土木研究所の構内施設を見学していただきました。



問い合わせ先:評価・調整室

 

つくばちびっ子博士 〜高速走行体験とダム水理実験施設の公開〜


バンクの傾斜を体験


カーブで遠心力と重力がつり合う仕組み
(赤い矢印の大きさが等しくなる角度と速度)

ダム模型実験の様子を見学

 7月29日に「つくばちびっ子博士」を国土技術政策総合研究所と合同で実施しましたので紹介します。「つくばちびっ子博士」は、全国の小・中学生を対象に、つくば市内の研究・教育機関等において科学技術や自然科学に触れさせ、科学に対する興味・関心を高めて夢や希望に満ちた未来を考えてもらうことを目的とした科学教育推進事業として、つくば市及びつくば市教育委員会主催の下、平成11年度から実施さています。
 6回の見学バスの運行で、404名(昨年348名)の小中学生(引率者を含む)に見学して頂き、過去最高を記録しました。2台の見学バスは、試験走路とダム水理実験施設にそれぞれ向かいました。
 試験走路では、構内にある様々な実験施設を説明しながら通常走行で1周しました。そして、南ループでは一旦下車して、バンクの傾斜に実際に登って子供たちに急な角度を体験してもらいました。この傾斜は27度で半径223mのカーブのため、曲がる時に時速120kmで走行すると傾斜に対して上向きの遠心力と下向きの重力がつり合います。その後、実際にバスの高速走行で体験してもらうと車内から歓声や拍手が沸き起こりました。
 また、ダム水理実験施設では、研究者からダムの形式、役割及び数について説明した後、模型に水を流して実験をしている様子を見学しながら、ダムに溜まる土砂の排砂対策の問題等を解りやすく説明しました。ダムの主な形式はロックフィルダム、アーチダム、コンクリートダムがあり、目的は洪水対策、貯水用等があります。また、日本にあるダムの数は高さ15m以上のもので約2800基あります。実験に使用している模型は、日本に実在するダムの模型であり、委託を受けて放流量の制御方法や設備の設置方法などを検討するために実験しています。
 参加者から、試験走路の高速走行を「毎年楽しみにしている」という言葉もかけられ人気の高さを実感しました。



(問い合わせ先:総務課)

 

土木研究所理事長表彰式及び伝達式が行われました


表彰状の授与式

優秀技術者の表彰状

優秀技術者及び優良業務表彰を
受賞された方々との記念撮影(つくば)

優良業務表彰を受賞された方々との記念撮影(札幌)

 平成21年7月16日に、土木研究所(つくば)において平成21年度独立行政法人土木研究所理事長表彰式が行われ、寒地土木研究所(札幌)では、理事長表彰伝達式が行われました。受賞者は、理事長を委員長とする「表彰審査委員会」により、6月15日にそれぞれの業績が審査されました。
 優秀技術者及び優良業務表彰について、当研究所が平成20年度に発注した委託業務において、その成果及び業務への取組みが特に優良であった技術者2名及び委託者4社が受賞されました。その他、業績表彰として11名、永年勤続表彰として30年勤続16名及び20年勤続8名の職員が受賞されました。
 表彰式では、坂本理事長から表彰状及び記念品が授与され、表彰後、坂本理事長の挨拶があり、引き続いて受賞者を代表して優秀技術者の葛目和宏氏(株式会社国際建設技術研究所)が謝辞を述べられました。
 また、寒地土木研究所講堂において、恒松所長から優良業務表彰の表彰状が授与され、表彰後、お祝いの言葉があり、引き続いて受賞者を代表してユニオンデータシステム株式会社副社長が謝辞を述べられました。
 なお、優良業務等表彰のうち優良業務は、株式会社国際建設技術研究所の「暴露試験によるASR進行状況調査業務」、株式会社ダイヤコンサルタントジオエンジニアリング事業本部の「河川堤防の浸透対策に関する数値解析業務」、ジャパンパイル株式会社北海道支店の「杭の水平載荷試験補助業務」、ユニオンデータシステム株式会社の「冬期道路プローブシステムの改良業務」です。それぞれ、その成果及び業務への取組みが特に優良であったと認められ受賞しました。また、優秀技術者については、前述の葛目氏のほか、木村仁氏(株式会社ダイヤコンサルタントジオエンジニアリング事業本部)が受賞されました。
 


(問い合わせ先:総務課)