土研ニュース

水災害軽減に関するプロジェクトをアジア開発銀行とICHARMが開始


生活に大きな影響を及ぼす水災害が世界中で頻発

Xianbin Yao局長(左)と坂本理事長(中央)、
竹内センター長(右)


プロジェクト協定書

ICHARMが行う主な技術協力の内容

 ICHARMはアジア開発銀行(Asian Development Bank; ADB)と共同でアジアの水災害軽減に関する地域技術協力連携プロジェクトを始めるため協議を続けてきました。
 その結果、プロジェクトとして正式に開始することが決まり11月13日(金)にフィリピン・マニラにあるADB本部において関係者による調印が行われました。ADBからはXianbin Yao地域・持続可能な開発局局長、土木研究所からは坂本忠彦理事長と竹内邦良ICHARMセンター長が出席し、プロジェクト協定書へのサインが行われました。
 
 プロジェクトの正式名称は「Regional Technical Assistance 7276: Supporting Investment in Water-Related Disaster Management(地域技術支援7276:水災害管理における投資の支援)」、期間は2011年の4月までとなっており、プロジェクトの概要はADBホームページでご覧いただけます。なお、このプロジェクトに関してADBは総額200万ドル(約1億8000万円)の資金を用意しており、必要経費としてその内の一部が土木研究所へ提供されます。
http://pid.adb.org/pid/TaView.htm?projNo=42110&seqNo=01&typeCd=2

 このプロジェクトでは水災害に苦しむアジアの中で特にインド・バングラデシュ・インドネシア・メコン河下流域(ベトナム・カンボジア・ラオス)に焦点を当て、各国が将来行う防災関連の投資が円滑に進むような技術協力をICHARMが行うことにしています。プロジェクトで実施する内容には、ICHARMが発展途上国向けに開発を進めてきている人工衛星情報を活用した洪水予警報システムの導入や各国からの研修生の受け入れ、コミュニティレベルの防災体制を強化するために現地で行うワークショップ等が含まれています。
 今後、約1年半にわたって各国や日本で活動を行っていきますので、折に触れて本欄でもご紹介していきたいと考えています。



(問い合わせ先:ICHARM)

札幌工業高等学校からインターンシップ(就業体験)を受け入れました


河畔林の生育状況調査

砂置換による締固め度測定

コンクリート内鉄筋の腐食状況調査

 寒地土木研究所では、10月7日から10月9日までの3日間に札幌工業高等学校土木科から3名の生徒をインターンシップ(就業体験)で受け入れました。このインターンシップは、高校生に望ましい勤労観や職業観を養い、主体的に進路選択が出来る能力や態度を育むことを目的に、札幌工業高等学校が地域や地元企業、行政機関などと連携協力をして実施しているものです。

10月7日
初日から「突固め試験のマニュアル作成」という難題に取り組んだ生徒達は、寒地技術推進室田辺主任研究員の指導の下、慣れないパソコンに悪戦苦闘しながら突固め試験結果を記入できるデータシートを作成しました。
 午後には、水環境保全チーム桑原総括主任研究員と豊平川の河畔林の生育状況調査を行いました。
10月8日
 2日目は、札幌開発建設部千歳道路事務所で施工している道央圏連絡道路の千歳市祝梅の現場で、砂置換による締固め度測定を行いました。手がかじかむほどの寒さの中、寒地地盤チームの佐藤主任研究員から親身の指導を受けつつ、3時間以上もの重作業をやり遂げました。
10月9日
 最終日は、耐寒材料チーム吉田研究員の指導の下、鉄筋コンクリート内の鉄筋の腐食状況を、自然電位法で測定・確認する実験作業を行い、午後からは、寒地道路保全チーム安倍主任研究員のアスファルト供試体製作の補助を行いました。

 3日間という短い期間であり、生徒達が作業の中身をしっかり理解できのかは分かりませんが、仕事をすることの楽しさやつらさを体験し、将来の進路を決める上で参考になったことと思います。



(問い合わせ先:寒地土木研究所 企画室)

   

「土木の日2009一般公開」を開催しました


橋コンテスト表彰式

橋梁撤去部材の展示

アッ!と驚くコンクリートおもしろ話し


関東地方整備局5事務所も参加

 去る11月14日土曜日、土木研究所と国土技術政策総合研究所の共催で「土木の日2009一般公開」を開催しました。このイベントは、広く一般の方に、両研究所と土木事業についての理解を深めてもらうことを目的として毎年行っており、今年で16回目を数えます。当日は悪天候や新型インフルエンザの流行にもかかわらず414名の来場者がありました。
 今年も毎年恒例の実験施設の公開や土木体験教室を開催しました。実験施設公開は、来場者に構内循環バスで見たい施設を自由に回ってもらいます。今年は舗装走行実験場、ダム水理実験施設、土石流発生装置、試験走路を公開しました。各施設では子供から大人まで楽しめるように詳しい解説を交えながら実験や実演を行いました。
 また、新たな試みとして、臨床研究用資材置き場に塩害や火災などで傷んだ橋の部材を展示し、来場者が間近で見たり触れたりできるようにしました。この展示では特に、昨年首都高速道路上で起こった火災などの事故によって被害を受けた部材に、多くの方が関心を寄せていました。さらに、見学者からは、「説明が丁寧でよかった」などの感想が寄せられました。ふだんは見ることのできない研究所の実験施設で、身近な話題を取り上げ解説したことで、一般の方が土木をより身近に感じ、理解を深めてもらえたのではないかと思います。
 その他、土木を身近に感じてもらうための体験教室、関東地方整備局の茨城県内の5事務所にご協力をいただいた働く自動車の展示、つくば市内の小学校5年生の力作がそろった「ボール紙でつくる橋コンテスト」の作品展示、吾妻小学校のマーチングバンドの公演など幅広い年齢層に楽しんでもらえるイベントを開催しました。
 また、今年度はスタンプラリーを復活させ、全てのスタンプを集めた人に「土木ものしり博士認定書」を発行しました。
 土木の日一般公開は、研究所の研究内容や土木事業の重要性をアピールする数少ない機会の一つです。来年度もよりよいイベントにしたいと思っていますので、ご期待下さい。



(問い合わせ先:研究企画課)

   

土研新技術ショーケース2009を開催しました


技術発表会

パネル・模型等の展示と技術相談

パネルディスカッション(広島)

 土研新技術ショーケース2009を9月30日(水)に東京都内で、12月2日(水)に広島市内で、12月10日(木)に福岡市内で開催しました。
 本ショーケースは、土木研究所の研究成果を広く普及させることを目的として、研究開発した最新の技術の中から適用効果の高いものを厳選し、商品をショーケースに陳列して販売するのと同じように、官民の土木技術者等を対象に発表会とパネル・模型などの展示で紹介し、実際の採用に向けて技術相談を行うものです。今回のショーケースでは、東京で11技術、広島で8技術、福岡で10技術を紹介しました。
 各会場の参加状況は、民間企業や国土交通省、地方公共団体、公益法人などから計580名の方々に参加をいただき、最後まで熱心に聴講いただくとともに活発に質疑も行われました。
 特に、広島においては新たな試みとして、中国地方整備局や中国地方の土木関係団体、大学などが開催する「建設技術フォーラム」と「土研新技術ショーケース」を1つのイベントとして統合し、同日・同会場で開催しました。その結果、フォーラムを目的として参加される方々に対しても、土木研究所の開発技術を紹介することができるなど相乗効果が得られました。フォーラムでは、「新技術活用の明日に向けて」をテーマとしたパネルディスカッションが行われ、発注者や受注者、教育研究機関の代表者とともに土木研究所の中村技術推進本部長がパネリストとして参加し、新技術がより多く採用されるような取組みなどについて熱い議論が行われました。
 来年、2月23日には札幌市内でショーケースの開催を予定しています。詳細については後日、本ホームページにてお知らせいたしますので、是非皆様のご参加をお願い致します。



(問い合わせ先:技術推進本部)

   

第4回技術者交流フォーラムin北見を開催しました


基調講演する渡邊教授

会場の様子

プログラム

 寒地土木研究所は現場密着型の技術開発、技術普及および地域における技術の向上等のため、道央、道南、道北、道東に支所を設置しています。各支所では研究開発の現地調査・試験の拡充とともに、地域におけるニーズの把握や研究成果・技術の普及、技術指導を実施しています。
 「技術者交流フォーラム」はこれらの活動の一環として、地域において求められる技術開発に関する情報交換、産学官の技術者交流および連携等を図る目的で、開催しています。
 寒地土木研究所道北支所は、10月14日に第4回技術者交流フォーラムin北見を開催しました。「オホーツク地域の自然環境と共生する寒冷地技術」をテーマに北見工業大学渡邊教授の基調講演をはじめ、寒地土木研究所の研究員や技術士会会員の講演を通じ、オホーツク地域(網走支庁管内)における技術力向上と、産学官技術者の交流と連携を図る場として開催し、約170名の参加がありました。
 北見工業大学社会環境工学科渡邊康玄教授は、「河川生態系の基盤としての河道の変化」と題し基調講演を行いました。渡邊教授は「河川環境は時間の経過とともに変化をする。生物はその変化を前提に生息しており、その変化を種の保存・繁栄に利用している」「河川環境を考える場合、基盤としての河床地形を十分に理解し、基盤が変化することを認識する必要がある。人間の思い通りに瀬淵は作れないので、自然の力を利用する必要がある」と締めくくりました。
 寒地土木研究所から研究成果を発表した後、技術士会からはオホーツク地域より発信する技術開発について2名が講演し、日東建設(株)久保社長はコンクリート構造物の強度診断に用いるコンクリートテスターを開発し、すでに市販していることを報告し、「社会資本の安全性確保と信頼性の向上のため研究開発を継続していきたい」と訴えました。
 斜里建設工業(株)土田社長は知床(斜里町)では、道路が物流・流通・人流の生命線であるとし、知床峠の除雪作業を安全に行うためのGPS施工システム開発を報告がありました。



(問い合わせ先:寒地土木研究所 寒地技術推進室)

    

第1回 国際橋梁管理者会議とCAESARの取り組み


米国ミネアポリスI-35W橋の崩落
(ミネソタ州交通局ホームページ)


国際橋梁管理者会議
(英国ケンブリッジ大学にて)

議論の様子

 先進国の主要な道路網は2度の世界大戦以降、急速に整備され、今では建設後50年以上を超える橋梁が殆どになってきています。その間には建設時には想定もしなかったような大きな車両を通すようになったり、交通量の増大があったりして、橋の傷みが激しくなっています。
 たとえば、アメリカやカナダでは、ある日突然橋が崩落し、犠牲者を出すという事態も経験しました。橋を守るためには、人の病気と同じように、症例と検査技術、治療の試みとその結果をできるだけ蓄積し、分析することが重要です。
 そこで、英国が中心になって、各国の橋の老朽化に関わる問題点、施策、対策成果、研究開発状況などの情報共有をするための国際橋梁管理者会議(IBF = International Bridge Forum)が設置され、その第1回会議が英国ケンブリッジ大学にて平成21年9月14日から3日間開催されました。土木研究所構造物メンテナンス研究センター(CAESAR)は、国や地方自体体が行う道路橋の維持管理を支援するための中央技術拠点であり、今回、会議に参画を要請されたものです。
 参加国は、英国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ(都合により欠席)、米国、伊、スイス、独、仏、そして日本で、参加者は、各国の政府や州など橋梁の管理者(オーナー)やその研究機関の代表です。
 各国の総括報告に関するもの、さらに、いくつかのテーマ別に関するものとで時間を区切って、議論主体で会議が進行され、我が国の橋梁の老朽化の状況やCAESARの推進する研究の新しいアプローチにも議論が集中しました。なお、CAESARの推進する研究の新しいアプローチについては、たとえばこの3月に政府の総合科学技術会議にて報告したものがありますので、ご興味のある方は併せてご覧下さい。
http://www8.cao.go.jp/cstp/project/bunyabetu2006/syakai/7kai/siryo1-2-1.pdf
http://www8.cao.go.jp/cstp/project/bunyabetu2006/syakai/7kai/siryo1-2-2.pdf



(問い合わせ先:CAESAR)