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打ち水の効果を知る
−路面散水の実験−

   長岡市で消雪パイプを利用した路面散水を行い、気温、湿度等を観測して、気候緩和策としての散水の有効性について検討しました。長岡市では冬季に効果的な除雪対策を行うため、消雪パイプを道路中央に埋設し、降雪時にある一定の積雪量に達すると地下水をポンプにより汲み上げ消雪パイプを通じて道路面に散水を行っています。現地観測では、市内に縦横に張り巡らされている消雪パイプのうちの一部分(総延長約500m)を利用して道路散水を行いました。
   観測は、1993年8月13日の午前9時から午後3時までの間行いました。なお、前日の夕方まで小雨が時折降る状態で観測当日も低温注意報が出されており、午前中は快晴だったものの午後には再び曇り出すという不安定な天気でした。観測対象域を図-1に、測定地点の様子を写真-1に示します。観測地点は散水区間内に1点、散水区間から約30m離れた地点に1点を設け、地上約1mの高さに計測機器を設置して地表面熱収支と気温、湿度、グローブ温度、風速等を計測しました。散水は観測開始後1時間及び観測終了前1時間は行わず、午前10から午後2時までの間のみ図中斜線で示した区間に散水を行いました。

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図-1 現地調査の対象範囲

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写真-1 測定地点の様子(左写真奥:A地点、右:B地点)

   図-2〜4は両地点で測定された気温、グローブ温度、湿度の経時変化を10分間の平均値で表しています。また、図-5には両地点の気温差、グローブ温度差、湿度差を示します。観測当日は散水を行ったA地点から散水なしのB地点に向かう平均0.5〜2.5m/sの風が卓越しており、散水域の影響がB地点まで及んでいたと考えられます。それにもかかわらず午前10時から午後2時までの散水時間帯では、平均的にみると、B点の方がA点の気温を0.5℃ほど上回り、日射量が最も大きかった10:30〜11:30にかけては最高で約1℃の違いが生じていました。
   一方、湿度に関しては、散水時間帯内では平均して数%ほどA地点の湿度がB地点を上回っており、最大で約5%の違いが見られました。観測開始後及び終了前1時間の散水を行わなかった時間帯の観測結果によると両地点の温度、湿度の差は平均的にはゼロか、むしろA地点で温度が高く湿度が低いことから、散水時間帯の温度、湿度の傾向は散水の影響によるところが非常に大きいと言えます。

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図-2 気温の時間変化                 図-3 グローブ温度の時間変化

クリックで拡大しますクリックで拡大します    図-4 湿度の時間変化             図-5 散水が温度、湿度に与える影響

   人間の温熱感覚は、気温、湿度とともに周囲の物体からの放射や風に対しても反応するため、気温、湿度の条件が同じでも周囲の物体の有無や物体の表面温度の違いに応じて体感温度が異なります。グローブ温度はこのような放射や風の影響も含めて、人間の体感に近い温度情報を出力することができます。
    図-3あるいは図-5に示すように散水時間帯での両地点のグローブ温度差は顕著で、日射が最大の時には約4℃の温度差が生じていることがわかります。A地点でグローブ温度が小さな値を示したのはグローブ温度計の最も近くに位置する道路の地表面温度が散水により低く抑えられたことが大きく影響しています。



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