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河川環境の情報発信と環境教育に関する研究河川環境を理解する上で捉えにくい要因を分析する

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背景

河川環境に関する事業を行う際には、地域住民と行政とが情報を共有し、合意形成(意見の一致)を図ることが重要視されています。また、行政にはアカウンタビリティ(説明責任)が求められ、専門的な知識や情報を市民に分かりやすく伝えることが課題となっています。しかし、河川環境の現象の多くは水面下等で繰り広げられているため、理解の難しさが指摘されています。その中で、河川環境の情報発信についてはその理論や方法に関する成果がほとんどありません。ここでは実務者が活用できる適切な手法の開発を目的として、河川環境情報を伝達する上で捉えにくい現象とその理由について整理し、具体的な発信手法の提案を検討しています。

河川環境の捉えにくい現象とその理由を整理しました

研究1

模型や映像を活用し研究成果の理解を促す

水面下で繰り広げられている現象を、私たちは直接見ることができません。ここでは模型や映像を活用して、魚類の生息場の空間構造を効果的に伝達する展示構成について検討しました。テーマとしたのは水際構造と魚類の生息量に関する研究です。植生河岸、コンクリート護岸、礫河岸の模型と水中映像を制作し、生息場所の構造と流速や照度等の物理環境、魚類の生息の関係について解説しました。模型は河岸が持つ機能について直感的な理解を促し、調査データの数値を具体的なイメージとして結びつけることができます。また、映像は生物の存在など水の性質上見えにくい情報を示すことができます。

■ 水面下の現象を理解するための展示構成

研究2

携帯端末を河川フィールドで活用する

河川では洪水や水面下の生息場などフィールドでは捉えにくい現象が多くあります。そこで、実験河川を題材に動画コンテンツを作成しました。例えば、氾濫原が水に浸かるときは洪水によって増水した水が氾濫原を覆っていく過程を定点カメラで撮影し、時間を圧縮して編集しました。実験河川ガイドウォークは、およそ30の動画コンテンツをiPod※(Apple社)に取り込み、フィールドで提供することで、捉えにくい自然現象を効果的に伝達することを目的に開発したセルフガイドプログラムです。利用者は実験河川を巡りながら、フィールドに設置してある複数の簡易サインパネルの前で動画コンテンツを視聴することで、様々な河川環境の情報を得ることができます。
※ iPodはApple Inc.の商標です。

■ 携帯端末を活用した河川環境情報発信

研究3

体験を通じた理解と断片的な知識を統合するプログラム

体験を通じて得た情報は、場所や時間に固有なものが多く全体を反映していない場合があります。当センターでは氾濫原環境を理解するため、ワンドに生息する二枚貝(イシガイ類)をテーマした環境教育プログラムを実施しました。ここでは河川の階層構造を①流域、②生息場スケール、③微生息場の3段階に区分しました。まず①流域では空中写真を活用しワンドが見られる場所ついて説明しました。ついで②生息場スケールでは実験河川のワンドゾーンに生息するイシガイ類を採捕してもらい、その後人工洪水を発生させて川とワンドが繋がっていく過程を観察してもらいました。そして③微生息場では、ワンドに生息するイシガイ類とタナゴ類の関係について解説しました。

■ 実験河川ワンドゾーンを活用した環境教育プログラム