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展示見聞録 紫江’S水環境館「河川観察窓」

 治水対策と水辺を活かした街づくりを目的に北九州市が行う「紫川マイタウン・マイリバー整備事業」の一環として昨年オープンした「紫江’S水環境館」を訪問しました。

 紫川に隣接するこの施設は、護岸内に幅7.2m×高さ2.3mのアクリル製の河川観察窓を取り付けた箱形護岸構造物として築造されています。窓越しに川を見るこのアイデアは、たくさんの市民からよせられた提案の中から、中学生のアイデアが採用されて実現したものです。

 観察窓に近寄ると対岸の景色とともに、川の中の様子を普段見ることができない視点から間近に観察できます。スズキ、クロダイ、マハゼ、モクズガニ等、紫川の汽水域の豊かな生物の自然な姿を見ることができます。

 また、この施設は河口に近いため、常に水位が変動し、時間帯によっては海水の遡上によって生じる塩水くさびの塩水層と、河川水の淡水層との境界面「淡塩境界面」を肉眼で確認することもできます。

 自然のままの透明度のため、水の濁りもそのままに映し出されます。時には流されてくるゴミが見えることもあり、私たちが普段、川に影響を与えながら生活していることを改めて考えさせられます。まさに生活に切り離せない川の現状を身近に実感できる展示だといえるでしょう。

 展示スペースを奥へ進むと、観察窓に現れる魚をはじめ紫川などの魚類を紹介する「北九州市の河川にすむ魚たち」の飼育展示のコーナーがあります。この展示に関する魚類の採捕、飼育管理は、学校ビオトープづくり、希少種の繁殖などで注目を集めている福岡県立北九州高等学校の課外クラブ「魚部」の協力で行われています。

 北九州市建設局下水道河川部水環境課の山川幸江さんにお聞きすると、「特に部員が作成する解説文は、魚類の名称や生態に関する解説だけでなく、魚の特徴についての感想なども自筆で記されているので来館者に好評。」とのこと。今後もさらに連携した取り組みを積極的に進めていくそうです。

 小倉駅からのアクセスも良い水環境館。観察窓に映し出される様々な川の表情を、季節や天候、時間を変えて何度も観察しに行ってみましょう。


吉冨友恭

(独)土木研究所 水循環研究グループ 河川生態チーム

間近に実河川を観察できる
「河川観察窓」。
紫川に隣接する
紫江’S水環境館の外観。
北九州高校の協力で
飼育展示が行われている。