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高水敷切下げ時期に配慮し樹林化の抑制を

 河川の植物は、川面に近い水際から高水敷のある高いところにかけて種類が異なっています。この性質を利用して、高水敷の高さを変化させ、湿地の創出や樹林化の抑止をしようとする工夫がいくつかの河川で試行されてきています。この高水敷の高さを検討するのと同じくらいに、いつ切下げるか? という時期の検討も重要です。例えば、春前に高水敷を切下げ、春先にやや湿った状態で裸地域が続くと、風や水流によって春先に生産されたヤナギの種子が運ばれ、数年後には一面にヤナギの樹林で覆われる可能性が高くなってしまうと考えられます。

 この現象を確かめるため、今年の春先に実験河川の高水敷の高さを変えて裸地面を創出したところ、無事に? ヤナギの種子が着床し、成長を続けています(写真参照)。一般的にヤナギの種子は、春先に着床してから2週間のうちに発芽を成功させないと生き残れない種が多いことが知られています。この例のように、高さだけでなく、季節も考慮しないと、切下げた土地が樹林化する可能性が高くなってしまうわけです。

 日本の河川は、ヤナギ、ハリエンジュ、竹林の3種類で約60-70%の面積を占めており、とりわけヤナギは河川の中で最も広域にみられる植物です。定期的に伐採、抜根などの方法もとられていますが、初期の侵入を抑えることが、その後の維持管理の軽減にも役立ちます。このためにも、切下げたことによって、樹林域を増やさない工夫が求められます。

 実験河川では、比較的長期にモニタリングをすることが可能ですので、今後、着床したヤナギがどのような過程を経るのか、モニタリングを行い、改めて結果をご報告いたします。

大石哲也

(独)土木研究所 自然共生研究センター

高水敷切下げ後に定着したアカメヤナギ