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ダム下流の環境評価ツール

ダム下流の環境評価への取り組みTools

ダム貯水池では山地から発生した土砂がせき止められ、上流から下流への土砂の移動が阻害されます。土砂が供給されなくなったダム下流では、洪水のたびに砂や小さな礫が流されることで河床が粗粒化し、生物相が大きく変化することが知られています。この流砂系への環境影響を緩和するための対策が現場で実施されていますが、事業後の評価事例はまだ少ないのが現状です。 自然共生研究センターでは、河床環境の変化による水生生物への影響を適切に捉える技術を開発し、ダム下流の河床環境を改善するための適切な土砂供給および、総合土砂管理の推進への貢献に取り組んでいます。

河床の石礫の露出高を簡易に予測するモデルの開発

露出高とは

石礫の露出高とは、河床中の石礫の天端から砂面までの高さを表しています。この露出高は土砂の流出・堆積で増減するため、土砂供給による河床環境への効果を定量的に捉える指標の一つになりうるものです。この露出高の過度の減少は、付着藻類の生育可能な面積の減少および付着藻類を主な餌資源とするアユの摂食環境にも影響を及ぼすおそれがあります。一方、露出高の過度の増加は、大型糸状藻類等、アユの摂食環境に不適な種が繁茂しやすくなるおそれがあります。このように、露出高は水生生物の生息場の評価にも寄与できる指標です。

露出高の簡易予測モデル(宮川モデル)

露出高を現場で測定する場合、潜水目視が必要となり長時間・高コストを要します。このため、河床材料の粒径に関する情報を用いて露出高を簡易に予測できるモデルを開発することで、露出高を現場で広域的に捉え、水生生物の生息場を定量把握できる指標として活用できることを目指しております。そして、現場の技術者のどなたでも本モデルを活用できるよう、β版を公開しています。本モデルは下記よりダウンロード可能です。ご利用の際は、マニュアルをご一読下さい。

■ 露出高の簡易予測モデル(宮川モデル)β版(エクセル リンク)

■ 露出高の簡易予測モデルのマニュアル(pdf リンク)

*本モデルは精度の向上、適用範囲の拡大を目指して、随時バージョンアップ予定です。(Last Update. 2021.4.01.)

利用の際のお願い

1.本モデルを用いた成果を論文等で公表する場合は、お手数ですが自然共生研究センターまでご一報いただくとともに、文章中に本モデルの利用がわかる記載(下記の参考文献を引用する、本文に「露出高の簡易予測モデルを利用」と記載、等)をお願いします。

参考文献:宮川幸雄,小野田幸生,末吉正尚,中村圭吾:ダム下流の環境評価を目的とした石礫の露出高の簡易予測手法の開発,ダム技術,No.396, pp.24-31, 2019.

2.本モデルに関するご質問がありましたら、自然共生研究センターまでお問い合わせ願います。

問い合わせ先:kyousei4〇pwri.go.jp(〇を@に変更してください)   

宮川 幸雄(国研)土木研究所 自然共生研究センター