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礫洲への種子の定着量に影響を及ぼす要因は何でしょうか?

礫洲への種子の定着量に影響を及ぼす要因は何でしょうか?

種子の沈降速度も影響しますが、礫の大きさや種子の形状にも影響されます。

背景と目的

  河川の樹林化や外来種の繁茂などの問題に対し、河道内の植生の管理は重要な課題です。河道への植物侵入の第一段階である種子の定着については、浮遊砂の考え方を適用し、沈降速度に依存して拡散するものと考えられていますが、礫洲のような凹凸のある河床では、礫と礫の間に捕捉されて定着が促進する効果もあるのではないかと考えられます。本研究では、このプロセスを現地調査と水路実験によって検討しました。

方法

  現地調査では、木曽川と長良川の礫洲において表層土を採取し、粒度および含まれている種子の種類と数を調査しました(図1)。試料は1回の洪水で交換された土層から採取しました。水路実験では、水理・底質条件と捕捉率の関係を3種類の種子を用いて検討しました。幅20cm、長さ7m、勾配1/100の水路に細礫(φ2-5㎜)または粗礫(φ30-50㎜)を敷き、流速を調整しつつ種子を流下させ、河床への捕捉率を求めました。用いた種子はブロッコリー、エゴマ、シバの3種類であり(表1)、それぞれ沈降速度と形状が異なります。

図1 礫洲で採取された種子の一部(種子右横のスケールは1mm)
図3 表面流速と種子の捕捉率との関係

結果と考察

  採取された種子数は、0.2㎜以下の細粒土砂量との間に強い相関がありました(図2)。種子は様々な沈降速度を有していますが、これらの成分と概ね似た挙動を取るようです。礫洲には、種子が少ないように見えますが、平均すると1㎡、深さ10㎝あたり約600個もの種子が存在していました。この値は森林での観測値と大差なく、植物が繁茂するのに十分な種子量が礫洲に供給されていることがわかりました。水路実験を行ったところ、種子が着床と再移動を繰り返しながら河床に捕捉される様子が観察され、いずれの種子も流速が大きい種子ほど沈みやすく、捕捉率が高くなりそうですが、ブロッコリーの結果を見ると沈降速度が大きくても必ずしも捕捉率が高いわけではありませんでした。一方、沈降速度がほぼ同じエゴマとシバでは捕捉率に差があることに加え、シバでは間隙の小さい細礫の場合に捕捉率が高く、他の2種類とは傾向が異なっていました。野外調査と水路実験の結果から、礫洲への種子の定着は、沈降速度のみならず河床の状態や種子の形状にも影響を受けることが示唆されました。この要因としては礫の遮蔽効果や礫間に生じる渦への取り込まれやすさが、礫の大きさや種子の形状によって異なるためではないかと考えられます。

図2 地点ごとの細粒土砂の含有量と種子数との関係
図3 表面流速と種子の捕捉率との関係