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河川景観に馴染みやすい護岸ブロックのテクスチャーの評価方法はありますか?

河川景観に馴染みやすい護岸ブロックのテクスチャーの評価方法はありますか?

景観に調和しやすいテクスチャーは護岸ブロック表面の陰影で評価できます。

背景と目的

  河川整備に多く用いられる護岸ブロックには、治水上の機能を担保しつつ、河川景観や自然環境の機能も保持することが求められます。そのため、景観に馴染む護岸ブロックの機能の1つとして、「素材にはテクスチャーを付ける」ことが求められています。既往の研究では、風景に調和しない印象を多く持たれるテクスチャーは「滑面」であり、「人工的である」「明るい」「平らである」が理由として挙げられます。そのため、風景への調和を損ねる「滑面」を規制するとともに、現場への普及のための汎用性のあるテクスチャーの評価手法を開発する必要があります。

方法

  護岸の「テクスチャー」とは、素材表面が持つ質感や肌理(きめ)を表します。護岸ブロックのテクスチャーの評価範囲については、図1に示すように、護岸ブロックの目地(破線)により区切られる面的な部分(実線)に限定しました。護岸ブロック表面の肌理や凹凸の存在は、光源の影響を受けることにより明暗、すなわち輝度のばらつきとして量的に表現できます。具体的には、護岸ブロック表面の肌理が細かく平らであれば陰影が乏しく輝度のばらつきは小さく、肌理が粗く凹凸があれば陰影に富み輝度のばらつきは大きくなります(図2)。そこで、この輝度のばらつきを標準偏差で評価できると考え、デジタルカメラの画像データから抽出できる輝度信号を用い、その有効性について検討しました。

結果と考察

  画像データを取得する撮影条件(表1、図3)を定めることで、輝度の標準偏差(σ)を安定して求めることができました。計125の護岸ブロック(滑面35、滑面以外90)から輝度の標準偏差を求めた結果が図4です。この結果から滑面と滑面以外とを分ける閾値(σLth)を11に設定しました。統計的にはこの範囲内に滑面の95%が含まれます。このように得られた閾値を用いることで、護岸ブロックの滑面と滑面以外を概ね判別できることが示されました。滑面以外でも、一部、閾値を下回るブロックがありますが、このテクスチャーは陰影が乏しく、見た目でも滑面と同程度に滑らかなテクスチャーでした。なお、油泡、気泡および色ムラが含まれると、適切な評価値が得られないので、留意して護岸ブロックを製造する必要があります。今後、この手法を通じて、河川景観に馴染みやすい護岸ブロックの普及に努めていきたいと考えています。

図1 護岸ブロックのテクスチャーの評価範囲
図2 テクスチャーの異なる護岸ブロックと輝度の分布の例
図3 写真撮影の位置(側面図)
図4 滑面と滑面以外の輝度の標準偏差のヒストグラム