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高水敷切下げ後に繁茂するヤナギ類を抑制する方法はありますか?

高水敷切下げ後に繁茂するヤナギ類を抑制する方法はありますか?

ヨシなどの草本を早期に回復させることでヤナギ類を抑制できる可能性があります。

背景と目的

  直轄河川の中下流域では、河積確保のために高水敷の切下げが実施されています。しかし、切下げ後の地盤面ではヤナギ類が繁茂し、河積を阻害するケースが散見されます。その対策として、ヨシなどの草本を移植し、定着を促すことで、ヤナギ類の繁茂を抑制する対策が試行されています。ここでは、ヤナギ類の生育環境に関する現地調査およびヨシ植栽後のヤナギ類の繁茂状況に関する資料分析により、草本の早期回復によるヤナギ類の抑制効果について検討した結果を紹介します。

方法

  東北から近畿までの計7河川を対象に、横断測線状に設定したコドラート内の優占植物と水面比高(地盤と水面の差)を調査・計測しました。資料分析では矢作川でヨシ原の再生事業を実施している箇所を対象に、2010年の事業開始から6年分の植生図を収集しました。収集した植生図をもとに、ヨシ根茎を移植した区画(移植区)と移植していない区画(無移植区)における群落面積の割合を比較しました。

結果と考察

  現地調査の結果、ヤナギ類は水面比高(平水面と地盤高の差)が小さい場所に生育していることがわかりました(図1)。この結果は、高水敷の切下げ高を水面近くに設定するとヤナギ類が繁茂しやすいことを示しています。また、同じような比高でヨシも多くみられることから、ヤナギ類とヨシは競争関係にあることが示唆されます。矢作川における群落面積の変化を見ると、無移植区では施工後6年目にヤナギ群落が約75%を占めたのに対し、移植区では約25%まで抑えられていました(図2)。この要因としては、移植区において移植後1年目からヨシが定着したことが関係していると考えられます。ヤナギ類の多くは明るく土壌水分の多い条件で旺盛な初期生長を見せることが知られています。このため、初期にヨシが優占した移植区ではヤナギ類の種子の発芽や実生の生育に必要な裸地(光環境)の制限を介してヤナギ類の定着を抑制することができたと考えられます(図3)。したがって、ヨシなどを中心とした草本の早期回復がヤナギ類の繁茂に対して一定の抑制効果があることが推察されます。       

図1 ヤナギ類と主な草本の生育環境の比較
 (アルファベットは多重比較の結果を示す)
図2 矢作川における群落面積の変化(割合)
図3 ヤナギ類の繁茂抑制イメージ