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深いために調査が困難となりやすい淵の状況を簡単に知る方法はありますか?

深いために調査が困難となりやすい淵の状況を簡単に知る方法はありますか?

携帯型ソナー(魚群探知機)や小型カメラを使うことで水深や魚類の生息状況を把握することが出来ます。

背景と目的

  瀬に比べて水深の大きな淵には多数の魚が生息するとともに大型の個体が定着しやすいことが報告されています。また、多くの魚が越冬や渇水時に淵を利用するのではないかと言われており、河川環境の中でも重要な場の一つであることが指摘されています。しかし、水深が1mを超え、歩いて渡ることが困難となるような場所では、淵の形状や魚類の生息状況を調査することが難しく、ボートを用いた調査や潜水による調査が必要となってしまいます。このような、調査の難易度が上がることは、淵を対象にした研究の妨げとなっているのが現状です。そこで、本研究では技術の発展により小型化された携帯型ソナー(魚群探知機)と360度カメラを用いることで、簡易に淵の状況を調査できるのかどうかについて検討を行いました。

方法

  水面に浮かぶ携帯型ソナーは、水中に音波を発し、その音波が川底に反射して戻ってくるまでの時間からその間の距離(水深)を測定します。測定結果はスマートフォンに無線通信で送られ、画面上に水深に関する情報が表示されます。そのため、釣り竿などを活用することで、調査者から離れた位置の水深を安全に測定することが可能です(図1)。そこで、得られる水深の精度を検証するため、実際の河川において携帯型ソナーと実測した水深との比較を行いました(図2)。また、360度撮影できるカメラを淵に設置し、1時間の動画を撮影することで、どのような魚種を確認できるかについて調査を行いました。

結果と考察

  携帯型ソナーは流れのある環境でも水深を正確に測定することができました。釣り竿を用いて投げる際には携帯型ソナーが着水時に沈むため、一旦、無線通信が途切れることもありましたが、速やかに通信が戻ることで測定結果をスマートフォン上で確認することができました。胴付き長靴を履いて水深を測定する際、深い淵の調査が困難な場所もあります。このような場所に対し、携帯型ソナーを活用することで安全かつ簡易に水深を測れることが確かめられました。また、淵に設置したカメラの映像から魚種を判別することはできましたが、透明度が低い淵では不明瞭なことが多く判別が困難となる場合もありました。サイズの測定手法については検討中ですが、大型と思われるナマズやコイなども映っており(図3)、個体数が少ないために普段の調査では見つけにくい体サイズの大きな魚を観察する手法としても使える可能性が示唆されました。       

■図1 携帯型ソナーと受信機となるスマートフォン
■図2 携帯型ソナーと実測による水深の比較
      (図中の実線は回帰直線を表す)
■図3 360度カメラに記録されたナマズ