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1997年の河川法改正から20年の間に川づくりにおける市民参加はどう変わりましたか?

1997年の河川法改正から20年の間に川づくりにおける市民参加はどう変わりましたか?

前半10年で主体的な活動が増えましたが、後半10年ではその伸びの鈍化がみられました。

背景と目的

  1997年の河川法改正で、河川管理の目的として「環境」が明文化され、市民の理解を得ることの重要性も明記されました。それに伴い、行政が市民に呼びかけるかたちで、川づくりへの市民参加が本格的に始まりました。しかし、その活動内容の変遷は十分知られておらず、川づくりへの継続的な市民参加に必要な支援策を考案するのに支障をきたす場合もあります。そこで河川法改正の前から活動する1つの市民団体を対象として、活動内容の変遷を追跡調査しました。

方法

  対象としたのは、福岡県遠賀川水系で活動する「直方川づくり交流会」です。この団体は河川法改正の前年(1996年)に発足し、今も活動を継続しているため、長期的な活動内容の変遷を追跡できます。その会の20周年記念誌から情報を抽出し、1996年6月27日~2016年12月13日の約20年間分の866件の活動を8種類に分類し(表1)、年毎に集計しました。

結果と考察

  年による変動はありますが、発足後10年間で活動数が増加傾向となりました。活動の種類を見ると、発足後5年間は行政側が企画した「会議」や「啓発」など室内における受動的な活動が多くを占めました。6年目以降になると、体験活動や交流(流域間や上下流間の交流)など市民団体が自ら企画したイベントも徐々に加わり、能動的な活動にシフトしてきたと言えます。これらの発展には、1997年からの10年間で行政側から多く打ち出された、河川環境施策も後押ししたと考えられます。一方、河川法改正から10年が経過した頃から20年目までの期間には、活動数に緩やかな減少傾向がみられます。この衰退化は全国の河川市民団体でも同様にみられる傾向で(「20年問題」として知られる)、メンバーの高齢化、後継ぎ役の不足などが原因とされています。したがって、川づくりに関する市民団体が活力を取り戻すべく、行政側からの働きかけが再び必要な時期に来ていると言えそうです。実際、「河川協力団体制度の運用」、「かわまちづくり支援制度」、「ミズベリング」など、人材育成支援や水辺の賑わいづくりの施策が取り組まれ始めており、その効果が期待されています。       

■図1 河川法の変遷と主な改正内容
(1997年の改正で市民参加の必要性が明示された)
■表1 市民団体の活動分類
■図2 直方川づくり交流会の活動件数の約20年間の推移矢印とその内容は行政側から打ち出された代表的な河川環境施策のタイミングと施策名を示す