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アユの餌場として重要な川底の石の埋まり具合を簡易的に予測できますか?

アユの餌場として重要な川底の石の埋まり具合を簡易的に予測できますか?

砂面から頂部までの高さを、石の大きさから簡易に推定する方法があります。

背景と目的

  アユは川底の石に生育する付着藻類を主に摂食します。このとき、石が埋まりすぎていると、付着藻類があまり生育しない上、アユが摂食しにくくなります。このため、川底の石の埋まり具合は、その場所がアユの餌場に適するかどうかを決める重要な要素です。しかし、石の埋まり具合を現場で測定するためには、石の砂面から頂部までの高さ(以下、露出高)を、潜って1つ1つ確認する必要があり、多くの時間と労力がかかるため、アユの餌場となる広範囲の調査が困難です。そこで、本研究では、より測定が簡単で過去のデータも多い、石の大きさをもとに、石の露出高を簡易に推定する方法を開発し、その精度を現場の測定データを用いて確認しました。

方法

  露出高は、主に石の大きさと中心点の位置で決まります。ただし、現場では、石の大きさおよび中心点の位置はばらばらで、川底は凹凸しています。このため、川底の石をその大きさに応じてグループ分けし、各グループの石について、中心点の位置のばらつきが正規分布していると仮定して、凹凸を数式で再現しました(図1)。この数式と、各グループの石の川底に占める割合から、露出高の平均値および分布を簡易に推定する数式を開発しました(図1)。  この露出高の簡易推定式の精度を確認するため、矢作川の2つの地点(以下A、B地点)を対象に、各グループの石の割合(表1)から推定式を用いて予測した露出高(以下、予測値)と実際に潜って観測された露出高(以下、観測値)の平均値と分布状況を比較しました。

結果と考察

  露出高の平均の予測値を観測値と比較した結果、両者は概ね一致しました(表1)。一方、露出高の分布の予測値を観測値と比較した結果、A地点で両者は概ね似た傾向でしたが、B地点で予測値が観測値よりも小さい方に偏る傾向が示されました(図2)。上記の理由について、B地点の石の大きさがA地点よりも小さいという特徴に着目して、現在分析中です。以上から、露出高の推定式は、現場の露出高の平均値および分布状況を概ね再現することが可能であるものの、B地点で分布のピークが異なるなど、推定式の精度には、まだまだ課題があるといえます。今後は、石の大きさのグループ分けを細かくする等により、推定式の精度を更に向上させる取り組みを行う予定です。       

■図1 露出高の推定式(i =1~3と設定した場合)
■表1 矢作川の観測地点(A、B地点)における各グループの石の割合、露出高の平均の予測値および観測値(()内の数値はそのグループ内における石の大きさの範囲を表す)
■図3 露出高の分布の観測値および予測値のヒストグラム