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河川の景観に馴染みやすい護岸ブロックの特徴について教えて下さい。

河川の景観に馴染みやすい護岸ブロックの特徴について教えて下さい。

古くから用いられてきた石積み(布積・谷積)を参考とすることで馴染みやすい印象となります。

背景と目的

 中小河川は規模が小さいために、河川空間に占める護岸の割合は大きくなります。そのため、護岸ブロックは景観の良し悪しを大きく左右する要因といえます。護岸ブロックは、大きさ、表面模様(表面に刻まれる機械的な模様や目地を模した模様)、積み方(布積、谷積など)により、全体としての見え方(景観パターン)が変化します(図1)。 既往研究では、護岸ブロックの景観パターンを10グループに分類し、景観面での選好性を評価しています。しかし、現存のブロックには、この10グループに分類されないパターンが多数あり、既往研究の成果だけでは網羅できていないことが課題でした。そこで、本研究では、より多種類の護岸ブロックを対象に、景観パターンのグループ化を行い、それらに対する選好性を調査しました。

方法

 現存する約420種類の護岸ブロックを、「大きさ」、「表面模様」、「積み方」の3要素の組み合わせに基づいてグループ化し(図1)、製品として組合せが確認できた36グループを抽出しました。各グループの景観としての良し悪しを評価するために専門家(景観工学)へのヒアリングと、一般市民(297名)へのアンケートを行いました。アンケートでは、 「穴が目立つ」など既往研究により忌避傾向が示されているグループは除き、残る25グループを対象としました。そして、河川景観として具体的なイメージが出来るように護岸ブロックを設置した合成写真を用い(図1)、グループごとに「景観に馴染んでいるか否か」を答えてもらいました。回答は5段階に設定し、「馴染んでいる」を5 点、「馴染んでいない」を1点とし、グループごとに求めた平均を景観に対する「評価値」として整理しました。 専門家へのヒアリングにより、景観面での問題が少なく、及第点が付けられた「小型・粗面・布積」のグループを評価値の基準とし、各グループとの差異を統計的に求めました。

図1 3要素の模式図とアンケート調査に用いた写真
図2 各グループの評価値と5段階の回答の割合n-y-lg

結果と考察

  専門家へのヒアリングの結果、大きさが小型で、積み方を布積もしくは谷積としたグループは高評価とされ、スリットなどの人工的な表面模様や野面石乱積風などの複雑な表面模様(様々な目地の模様が混在)は低評価となりました。専門家が及第点とした「大きさ・表面模様・積み方」が「小型・粗面・布積」のグループは、アンケートにより評価値が3.03となり、「小型・粗面・谷積」や「大型・谷積風・特殊積」、 「大型・野面石乱積風・特殊積」は3.3~3.4と基準よりも高い評価となりました。「小型・額縁・谷積」と「大型・布積風・布積」、「大型・切石乱積風・布積」、「大型・切石乱積風・芋目地積」は基準と同程度となり、その他は1.8~2.7と低い値でした(図2)。古くから用いられている護岸は、石材を使用し布積や谷積といった積み方で作られています。アンケートで評価の高いグループは、この伝統的な護岸に類似しており、 市民にとって見慣れたパターンとして馴染みやすいと評価されたと考えられます(図3)。一方、低評価となったグループには、スリット模様のような直線が目立つ人工的なパターンや、ブロックの輪郭(ブロック同士を接合するための目地で作られる線)と、表面模様が調和していないパターンが多く含まれていました(図4)。護岸ブロックの景観パターンを考える際、伝統的な石積みを参考にするとともに、輪郭と表面模様の調和に配慮することで、河川景観に馴染みやすくなることが明らかになりました。

図3 伝統的な石積みの景観パターン例
図4 ブロックの輪郭と表面模様の組合わせ例