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市民主体の川づくり計画を深化させるコツはありますか?

市民主体の川づくり計画を深化させるコツはありますか?

市民と行政をつなぐ中間支援組織が役割を拡大していくことが重要と考えられます。

背景と目的

 水辺空間の整備に対する自主計画を市民が立案して行政に提案することがあります。このような市民主体の計画を基に施工された事例は、デザイン性や利活用の面で高い評価を受けています。しかし、市民主体の計画がどのようなプロセスを経て、より良い整備につながるのかを分析した事例はほとんどありません。当センターでは、2019年に国営木曽三川公園かさだ広場(約35ha)の利活用について市民から相談を受け、ワークショップ等の運営を支援し、2020年に市民主体の計画が行政に提案(図1)されるまでに至りました。そこで、本研究では市民による計画が官に提案されるまでの発展過程を振り返り、「産・官・学・民」といった関係主体の貢献度や連結性がどのように変化していったのかについて分析しました。

方法

  市民による計画の深化はワークショップを主体とするもので、回を重ねるごとに関係者が変化していきました。市民からの提案に至るまでに見られた各主体の結びつきの変遷について、ネットワーク図を用いて可視化しました。各主体を頂点として、主体間のやりとり(メール、電話、対面)を1カウントとして、それらの合計を頂点の大きさに反映させることで、どの主体が中心的な役割を担ったかを把握することができます。また、主体間のやり取りを線として結び、線の本数から、どの主体がハブのような多数の主体をつなげる役割を果たしたのか把握しました。

結果と考察

  ネットワーク図に見られた変遷をみると、頂点の数は5→5→7→9→9となり、線の本数は4→5→7→11→14となり、頂点の大きさ(合計)は235→255→455→476→675となりました(図2)。ワークショップ2回目以降に着目すると、かわまちづくり会(市民団体)と自然共生研究センターが、別の主体と結びつきを強めており、関係主体を拡張させていました。かわまちづくり会は市内の関係主体(地域住民、市)と結びつき、自然共生研究センターは管理者である国行政(木曽上)と、それぞれが日頃から関わりが深い主体を中心に結びついていきました。すなわち、市民団体だけでは、限定されていたかもしれないネットワークに、自然共生研究センターという研究機関が中間支援として加わったことで、「産・官・学・民」が揃ったより幅広いネットワークへと拡張したと考えられます。今回は、中間支援を自然共生研究センターが果たす事例でしたが、大学やNPOなど地域のシンクタンクのような組織が、同じようにネットワークを広げる役割を担う事例もあります。今後、より良い計画の立案のために、地域の実情や計画の内容に応じた最適なネットワークの構成について検討していく必要があります。       

■ 図1 ワークショプの意見をもとに構成された市民提案のかわづくり計画 (2020年6月提案)
■ 図2 市民による自主計画のネットワーク変換