国立研究開発法人 土木研究所

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土木学会主催の水工学に関する夏期研修会で
山口嘉一(理事)がダムの維持管理に関する講義を実施しました

 平2017年8月31日(木)~9月1日(金)の2日間、大阪大学吹田キャンパスにおいて開催(主催:土木学会(担当:水工学委員会、海岸工学委員会))された第53回水工学に関する夏期研修会において、 「ダムの維持管理-堤体及び基礎地盤を中心として-」と題した講義を行いました。講義では、最近国土交通省より出された基準、要領類に基づき、 具体的な事例も交えてダムの維持管理の特徴や現状などについて紹介しました(写真1参照)。

 水工学に関する夏期研修会は、水工学に関する最新の知見を提供して情報共有を図る目的で開催されているもので、前回の東京オリンピックの開催された1964年に第1回が開催された後、 毎年開催され(1969年のみ開催されず)、今年が第53回となっています。 今回の研修会では、河川・水文コースのテーマが「河川の維持管理と流域の保全」、海岸・港湾コースのテーマが「海岸・港湾における構造物の維持管理と海岸保全」と、 両コースとも「維持管理」が主要テーマとなっています。当方の講義は、河川・水文コースにおいて行いました。なお、事務局の情報によりますと、 河川・水文コースには112名の参加者があったとのことで、講義時に会場を見渡した際に盛会だとの印象を持ちました。

 当方の講義の構成は、以下に示すとおりです。

  1. ダム機能とダム型式
  2. 管理ダム数の推移と維持管理の重要性
  3. ダムの維持管理の特徴と方針
  4. ダム総合点検の概要(堤体及び基礎岩盤を中心として)
  5. 総合点検で明らかになった技術的課題と調査事例
  6. ダムの長寿命化技術

 まず、大学の講義では、河川構造物の一つであるダムと取り上げて詳しく説明されることはないと考え、ダムの機能や型式について簡単に説明しました。 その後、管理ダム数の経年区分の分析結果を説明し、他の土木構造物と同様、完成後長期間経過したダム数が増加しており、効果的かつ効率的な維持管理が必要である現状について述べました。

 また、堤体や基礎地盤等の土木構造物、機械設備、電気通信設備、貯水池などの多くの施設・設備から構成されるダムの維持管理上の特徴や留意点について説明した後、 ダム施設の長期供用を目指した維持管理にために国土交通省により制度化された「ダム総合点検」について、2013年に発刊された要領に従って詳細に解説しました(図1参照)。 さらに、総合点検から明らかにダムの維持管理における具体的な課題についても実例を示しながら紹介しました。

 最後に、ダムの長寿命化を達成するための技術として、健全度診断技術、保全対策技術及びダム再生技術などについても紹介して、講義を締めくくりました。

 講義後には、既設ダムの基礎岩盤の劣化状況調査やダムの安全管理のための計測結果についての定量評価の可能性などについての質疑応答を行いました。 積極的に質問をしてくれる参加者がいたことで、説明できる情報の範囲が広がり大変ありがたいと思いました。 当方は、長年ダムに関する研究開発や技術支援に携わってきましたが、歴史のある研修会において国土交通省の施策やそれの裏付けとなる土木研究所の成果に基づく講義を行えたことは大変光栄なことと考えています。 今後も機会があれば、土木研究所の研究成果を積極的に発信していきたいと考えています。

 なお、この講義のために作成したテキストは、国土交通省国土技術政策総合研究所河川研究部大規模河川構造物研究室の金銅将史室長との共著によるものであることを記しておきます。

写真1 研修会における講義の状況 図1 ダム総合点検の概要を示したスライド
写真1 研修会における講義の状況 図1 ダム総合点検の概要を示したスライド