土木研究所 構造物メンテナンス研究センター

橋の損傷メカニズムを知る

これまで地震により多くの橋が被害を受けました
被害が発生すると、直ちに調査を行います

ここで、調査で重要なのは、
「何故、地震によって橋が壊れたのか?」
「どのような壊れ方をしたのか?」

原因を究明することです

原因を明らかにすることで、今後の耐震設計の基準に反映することができます
(図1はその1例です)

※「損傷メカニズム」といいます

阪神大震災による橋の被害 図1

これらの原因を究明する方法としては、以下のアプローチがあります

  • 解析から原因を究明する
    このアプローチでは、時々刻々の橋の挙動などを明らかにすることができます
  • 損傷した痕跡から得られた事実を積み重ねて原因を究明する
    このアプローチでは、橋の挙動や壊れた箇所における力の作用状態を明らかにすることができます

CAESARでは、地震による損傷した橋の部品をたくさん提供頂いています

損傷した橋の部品 提供頂いた部品の一部
(写真は「支承」というものです)

これら部品から、橋の損傷原因等を究明しています

では、その研究を見てみよう!

支承の損傷の謎

2016年に熊本で発生した地震では、多くの橋が被害を受けました

写真1~3の橋はその中の1橋です

地震で損傷した橋 写真1
地震で損傷した橋 写真2
地震で損傷した橋 写真3

この橋を調査した結果、下図のようなことがわかりました

損傷した橋の調査結果

ここで、○で囲んだ部分を見てみましょう

橋の部分拡大画像
支承 写真4

写真4は「支承」と呼ばれているものです

支承について知りたい方は、「技術支援」の「熊本地震復旧支援」又は以下のリンク先をご覧下さい
道路橋の支承に求められること
(設立10周年記念CAESAR講演会)

壊れた箇所を上から見てみると...

壊れた個所

何故、この様な壊れ方をしたのでしょうか?

損傷原因の究明(実験してみる)

損傷原因の究明するために、実験により再現してみる
こんな実験装置を用いる

損傷原因の究明

赤丸部分に供試体をセット
(提供頂いた熊本地震により損傷した支承を用いています)

支承の中身はこんなものです 支承の中身

(ちなみに)
土木研究所では海外の研究機関等との交流もあるため、英語が使い放題です

さてどうなるでしょう?
衝撃の実験映像をご覧ください

実験結果から損傷原因の推理してみる

実験途中の映像 実験途中の映像
損傷原因の推理

推定した結果をまとめると

推定した結果のまとめ
推定結果まとめ

おわりに...という名の案内

ここで示したのは、ほんの一部です。詳しい情報を知りたい方は下記のHPを参照ください
第10回CAESAR講演会
要因は、地盤変位か振動か~熊本地震により被害を受けた道路橋の損傷痕に基づく要因分析~

もっと損傷原因を推理したい方は以下の論文をご覧ください

  1. 大住道生,星隈順一:熊本地震により被害を受けた道路橋の損傷痕に基づく要因分析,第20回性能に基づく橋梁等の耐震設計に関するシンポジウム講演論文集,pp.121-128,2017.
  2. 江口康平,余野智哉,中尾尚史,大住道生:熊本地震後のゴム支承の損傷状態から推定する地震時挙動,第22回橋梁等の耐震設計シンポジウム講演論文集,pp.5-12,2019.
  3. 二宮智大,余野智哉,中尾尚史,大住道生:地震の被害を受けた支承の損傷原因に関する実験的検討,第22回橋梁等の耐震設計シンポジウム講演論文集,pp.13-20,2019.
  4. 中尾尚史,江口康平,二宮智大,大住道生:地震の影響を受けた支承の残存性能の検証と損傷痕に基づく橋の挙動の推定,土木技術資料,61-11,pp.16-21,2019.
  5. Hisashi Nakao, Kohei Eguchi, Tomoya Yono, Michio Ohsumi:DAMAGE MECHANISM OF OKIRIHATA BRIDGE DUE TO KUMAMOTO EARTHQUAKE, 17th World Conference on Earthquake Engineering (17WCEE),2d-0071(12page),2020.
  6. Kohei Eguchi, Hisashi Nakao, Tomoya Yono, Michio Osumi:DAMAGE MECHANISM OF TAWARAYAMA BRIDGE DUE TO KUMAMOTO EARTHQUAKE,17th World Conference on Earthquake Engineering (17WCEE),2d-0077(9page),2020.
  7. Michio Ohsumi, Hisashi Nakao, Kouhei Eguchi:Analysis of Damage Mechanism of Road Bridge Damaged by Kumamoto Earthquake,17th World Conference on Earthquake Engineering (17WCEE),2d-0077(11page),2020.

コンテンツ作成:江口 康平、中尾 尚史
更新日:2021/8/25