実験河川を活用して河川における自然環境の保全・復元方法について調査・研究を行っております

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特集 魚の棲む川へ。
「瀬と淵」、そして「水辺の植物」。
魚の生息場所と生息量には密接な関係がある。
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魚類の生息場所を類型化し、これらと魚類の生息量との関係を調べたところ、
両者には定量的な関係があることが分かった。
生息量の多少はまず「早瀬、淵」および「平瀬、とろ」で二分され、
後者はさらに水際植生率の大小によって区分される。
結果としては、「早瀬」「淵」における生息量は他のタイプに比べて有意に大きく、
実験河川のような小規模河川でも瀬と淵の生息量に及ぼす効果が確認できた。


厳密なデータとして提示されたはじめての試み
文・水野 信彦
愛媛大学名誉教授・自然共生研究センターアドバイザー委員
 「自然共生研究センター」の研究活動が精力的に進められている。それは、1998年11月に通水が始まると同時に開始された。通水と同時に遡上してきた魚類を調査したのである。
 センターには、3本の実験河川があるが、その内の1本はほぼ直線的で環境も単調であるが、他の2本には瀬や淵、ワンドなどの多様な環境が設定されている。遡上して住みついた個体数は、後者の方が数倍多いと推定された。また、翌年の8月と10月に調査したときの生息個体数は、瀬や淵のある後者の方で約10倍に達していることが判明した(同センター活動レポート99より)。
 この記念すべきニュースレター第1号には、これらの調査結果を踏まえて、瀬と淵や植生との関連で魚類の生息状態が分析されている。その結果は、「流水域では平瀬やとろよりも早瀬の方で、さらに早瀬よりも淵の方で、生息量が大きいこと」、また、「平瀬やとろにいくら植生が繁茂しても、上記の傾向は覆されないこと」が、極めて明確に示された。
 通水直後から開始された、生息状態に関する上記のような種々の調査結果は、自然河川での従来の魚類調査からもある程度は推測されていたことではあった。しかし、これほど明確な相違が厳密なデータとして次々と提示されたのは、初めてではなかろうか。このセンターのような、大規模な実験施設で初めて得ることのできる成果といえよう。自然河川での魚類を相手に、効率の悪い調査をジタバタと長年続けてきた私にとっては、まことにうらやましい限りである。
 ただし、大規模ではあっても、やはり実験施設の川は自然の多くの河川に比べれば狭いし、不自然な面もあるかと思われる。非常に難しくはあっても、これらの成果を自然の河川で検証する努力も近い将来には進めて欲しい、と願うのは私の欲張りすぎであろうか。

≪こんな小さな河川でも、瀬と淵は重要な生息場所であることを実感した≫
報告:担当研究員 萱場祐一
(独)土木研究所 自然共生研究センター
 私たちは瀬や淵等個々の生息場所を対象とした魚類の生息状況の調査、研究を行ってきた。本報は平成11年の夏期を中心に行った魚類の生息場所と生息状況に関する調査結果を短くとりまとめたものである。
(1)実験の概要
 調査は自然共生研究センター内にある3本の実験河川で行った。実験河川の長さはおよそ800m、平常時の水面幅は標準で3m程度である。実験河川内には、早瀬や淵が分布する区間、平瀬が長く続く区間、水際にコンクリートを張り植生の繁茂を抑制した区間等異なるタイプの生息場所が存在する。
 実験では生息場所が比較的同質な区間を選定し、ここで魚類調査を実施して、生息場所のタイプと生息量、種類、体長分布等の特性との関係を調べた。3本の河川を流れる水は隣を流れる木曽川の一次支川新境川から取水し、実験河川流下後、新境川に合流する。魚介類の実験河川への移入は主として新境川合流点から自然に行われる。通水は平成10年11月24日〜平成12年1月6日まで間断なく行った。平常時の流量は0.05〜0.1m3/s程度である。
(2)魚類調査
 魚類調査は平成11年3月、5月、7月、8月、10月、12月の合計6回実施した。ここでは7月〜10月における調査について述べる。魚類調査では、流水域および水際域における生息場所の状況が比較的同質と考えられるセグメントに実験河川を分割した。次に、各セグメントから代表的な調査区間を設定し、ここで魚類調査を実施した。
 魚類調査ではまず調査区間の上下流端を網で静かに区切った後、電気ショッカーによる採捕を実施した。採捕は調査区間の下流から上流に向かって行い、採捕した魚類はその場で種の同定、標準体長、湿重量の測定を行い、当該調査区間に再度放流した。1調査区間の長さは標準で15m、標準的調査区間における努力量は1分間×3回である。
(3)生息場所の分類と調査
 生息場所と生息状況との関連を調べるには、まず生息場所を分類しなければならない。ここでは、既往の分類に関する研究を参考に生息場所の分類を行った。
 まず、河道を横断方向に流水域と水際域に分割した。流水域は水際の影響をあまり受けずに水が流れるところで、水面の形態、水深、流速の大小を考慮して「淵」、「早瀬」、「平瀬」、「とろ」に分類した。淵は水深が局所的に大きく流速が小さいところ、早瀬は水面が白く白波立ち流速が大きく水深が小さいところ、平瀬は水面がしわ立つが白波がたたないところ、とろは水面が鏡のようになめらかなところである。一般に早瀬、平瀬、とろの順に流速が小さく、水深が大きくなる。
 水際域は水際に繁茂する植生の多少によって分類した。河川を真上からみて水際植生の水面への投影面積を測定し、これを水面積で除した百分率を水際植生率とした(図1)。あまり細かい数値は意味がない(植生の形状が変化しやすい)ので、ここでは、水際植生率が「10%未満」、「10%以上20%未満」、「20%以上」の3つにランク分けをした。

(やっぱり、「早瀬」と「淵」に魚は多い)

 まず、流水域における生息場所のタイプと生息量との関係をみてみよう。(図-2)ここで生息量とは各調査区間で行った3回の採捕で捕獲された魚類の総湿重量を調査区間の面積で除した単位面積当たりの湿重量を示す。なお、夏期に優占した魚類は、フナ類、タモロコ、オイカワの3種類である。各タイプと生息量との関係であるが、淵と早瀬で大きく、平瀬ととろでは小さい。その差は非常に大きく淵と平瀬・とろで比較すると10〜20倍くらいの大きさになっている。
 次に、平瀬ととろについてのみ水際植生率との関係をみてみよう(図-3)。淵と早瀬では水際植生率との組み合わせが少なく、水際植生率との関連性は解析できなかった。ここでも生息量の単位は単位面積当たりの湿重量を用いている。水際植生率が大きくなるにつれて生息量も大きくなっていることがわかる。「10%以下」に比べて、「20%以上」は、例えば10月の結果をみると5倍程度の湿重量に達している。
 以上から、流水域と水際域における各生息場所と生息量については一定の関係がみられた。流水域は淵と早瀬の方が、水際域では水際に植生が繁茂している方が生息量が大きかった。しかし、流水域が平瀬やとろの場合水際にいくら植生が繁茂してもその生息量は淵や早瀬と比較してさしたるものではない。図-4にこの結果を概念的に示したが、平瀬やとろに植生が繁茂しても淵の生息量には到底及ばないのである。
(水際だけでなく、川底の形も大切なポイント)
 河道の直線化は淵と早瀬の消失を招き、河岸をコンクリートで固めることは水際植生の繁茂を困難にする。本研究は、実験河川という限定された河川での調査結果であり、どこまで普遍性があるかはわからないが、淵と早瀬の消失が図-4の一番左下のような状況をもたらす可能性は否定できないだろう。水際だけでなく川底の形をどうするのか、多自然型川づくりにおける大きなテーマである。

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