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寄り洲を形成し、川の形と流れに変化を与える「バーブ工」

  「バーブ工」という名前を初めて聞いた方も多いのではないでしょうか。

  バーブ(barb)とは、辞書によると「(矢じり・釣り針の)あご、かかり、戻り、さかとげ」を意味する英単語です。「バーブ工」は、川の流れに対して、河岸から上流側に向けて突き出して設置する、高さの低い水制の一種で、流れに運ばれてくる砂を溜めて寄り洲を形成することを目的とした河川工法です。

 自然共生研究センターでは、バーブ工の持つ「寄り洲を形成する機能」に着目して、調査・研究を進めています。なぜならば、バーブ工が日本の中小河川の抱えるいくつかの課題に対して、有効な工法ではないかと考えているためです。

 日本の中小河川の多くは、高度成長期以降に改修が進められ、より多くの洪水を溢れさせずに流すために、段階的に河床を掘り下げ、護岸を積み、結果として台形を逆さにしたような、狭くて深い川が多くみられるようになりました。

 洪水が土砂を押し流す力は、川の勾配と水深が大きくなるほど強くなることから、狭くて深い断面に改修された川は、洪水時にはより沢山の土砂が流れることになります。上流から流れてくる土砂よりも、下流に流れ出していく土砂の方が多ければ、河床は低下します。そのようにして改修後に河床低下が進んで岩盤が露出したり、改修直後の時点で河床に固く締め固まった地層が露出したりすることで、瀬淵が失われた川が、日本の各地にみられるようになりました。

 バーブ工は、洪水の流れを邪魔することなく、土砂を溜めて寄り洲を作ることができ、川の流れや河床材料に多様性を安価に回復できる工法の一つとして、私たちは注目しています。また、その応用として、川を横断して設けられた帯工の下流側に生じている落差を解消する使用方法を検討しています。

 平成23年からは、バーブ工に興味のある研究者、有識者、建設コンサルタント技術者、メーカー等が集まったバーブ研究会が開催されており、私たちも研究会に参加しながら、バーブ工の機能の解明と、設計法の提案に向けて、調査研究を進めているところです。

参考:バーブ研究会の開催状況

  第1回 in 北海道(H23/6/21-23) 現地調査と勉強会

  第2回 in 岐阜 (H23/10/20-21) 

岐阜県と共催の勉強会、揖斐川支川桂川での試験施工

  第3回 in 北海道(H24/8/27-28) 現地調査と勉強会

関係資料ダウンロード:「中小河川の課題とバーブ工法」 ELR2012自由集会発表資料PDF

原田守啓

(独)土木研究所 自然共生研究センター  

北海道 精進川放水路のバーブ工
北海道 日高門別川のバーブ工