国立研究開発法人 土木研究所

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年頭のご挨拶

 



国立研究開発法人土木研究所理事長藤田光一

新たな年を迎えました。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

その1月1日に令和6年能登半島地震が発生しました。
この地震に伴う災害により亡くなられた方に対し、謹んで哀悼の意を表します。
そして、被災された地域の皆様に心よりお見舞い申し上げます。

※ 令和6年能登半島地震に関わる土木研究所の現下の取り組みはこちら

土木研究所は、本年、次のような抱負をもって歩んで参ります。

□ 今あらためて土木技術の本質をしっかりとらえる 土木研究所の任務は「土木技術の向上」を通じて世の中を良くすることです。 人間社会が発展でき、自然の恵みを享受しながら、誰もが・どこでも・安心して生き生きと暮らせる社会の実現に向けて、 地球と人間との間に“インターフェース” を備える-これはまさにインフラストラクチャーであり、その構築は、文明が始まって以来 今日に至るまで人類の営為となってきました。この「良くなる」 ための機能が国土そして各地域で永らく発揮されるようインフラ群を上手につくり、なじませ、手入れをする-その根幹にあるのが土木技術です。インフラ整備は必須 の手段ですが、その前提には「世の中を良くする」という大目的の実現があるのです。

□ 土木研究所が大切にすることを自覚して、日々の取り組みの基とする 私たちが研究開発・技術向上において一貫して大切にしてきたのは、次の6つです。 1. 科学的思考を通じた現象の本質の追究(→これこそが問題解決の本道)。 2. 獲得知見の体系化と幅広い共有化。 3. 「実際」を尊重すること(→理論の“主人”は現実・現場であって、逆ではない)。 4. 現場実装までの完遂(→そこまでを見通した技術向上)。 5. “わからないこと”も直視した、不完全情報下での合理的な総合判断(→対象は、“きれい”(論文として評価されやすいなど)だから選ぶのではなく、必要だからこそ選ぶ)。 6. 技術適用に対する深い責任意識(→最後まで受け止める覚悟)。 これらは、これからも私たちの心棒です。

□ 確固たる土台に、時代の要請を自ら考えて注入する 土木技術の本質は揺るぎません。しかし追求する対象も実現の手段・道筋も時代とともに変わります。土木研究所は、そのつどなすべきことを洞察し、自らのあり方と仕事の内容・やり方を開拓して来ました。 現下の取り組みの中軸は、直面する自然災害の激甚化・頻発化、膨大なインフラの老朽化進行、急速な生産年齢人口の減少、気候変動影響への対処をターゲットとした「第5期中長期計画」です。その実施においては、既存技術を伸ばす一方、時にその“天井”を突破し、 新興著しい技術の組み込みと分野間の越境・融合を積極的に図り、従来思考・枠組みにとらわれず進んでいきます。2年前に作られたこの計画は、研究の進展によっては、さらにダイナミックに良い成果を産み出す発射台と捉えます。

□ 課題を俯瞰し連携拠点としての役割を発揮する 土木研究所は、国土交通省等の現場を預かる組織と密に連携しながら、本質的ニーズと研究課題を自らの眼力で見定めることを旨としてきました。そして、自前力だけでは足りないとなった時には、国民に必要な成果が早く届くよう、国土技術政策総合研究所とはもち ろんのこと、諸機関等との連携・協働に注力してきました(産学官の共同研究制度は1980年に設立)。それは今、「社会にイノベーションをもたらす研究開発が広範に励起する状況づくり」という科学技術政策の今日的主題に貢献するマネジメントにまで展開* しています。 *令和5年度より土木研究所は、内閣府SIP第3期課題「スマートインフラマネジメントシステムの構築」の研究推進法人、並びに、 国土交通省SBIR フェーズ3基金事業-防災・インフラマネジメント分野での運営支援法人

□ 研究者・技術者が様々に伸びる場 人こそが、研究所の、そして研究開発の原動力です。この対象は土木研究所所属の研究者に限るものではありません。知恵や情報を交わ らせ化学反応を起こす、協働して創り上げる、現場課題の解決や災害対応にともに汗をかくなどの機会や、技術支援、研修を通じて、 様々な方々が私たちと色々なつながりを持ち、それは、ICHARMの活動に代表されるように国際的にも大きく広がっています。 土木技術の本質に共感し次代を担う人たちの輩出が強く望まれる今、研究者や技術者が刺激を受け触発され、成長の糧を得る場 としての役割も、土木研究所は積極的に追求して行きます。

令和6年1月           
国立研究開発法人土木研究所   
理事長 藤田 光一