研究成果・技術情報

平成25年度論文奨励賞 受賞

細粒土砂の挙動に着目した大規模土石流の流下過程に関する
 数値シミュレーション : 深層崩壊に起因する土石流への適用

土砂管理研究グループ(火山・土石流)の西口幸希前交流研究員らによる論文が、
下記のとおり、平成25年度論文奨励賞を受賞しました。


論文名:細粒土砂の挙動に着目した大規模土石流の流下過程に関する数値シミュレーション :
深層崩壊に起因する土石流への適用
(砂防学会誌,Vol.64,No.3,pp.11-20,(2011))
筆者:西口幸希(1)、内田太郎(2)、石塚忠範(3)、里深好文(4)、中谷加奈(5)
(1)土砂管理研究グループ(火山・土石流) 前交流研究員/
(2)国土交通省国土技術政策総合研究所/
(3)土砂管理研究グループ(火山・土石流) 上席研究員/
(4)立命館大学理工学部/
(5)京都大学農学研究科
受賞理由(※):
 深層崩壊に起因する土石流の特徴は、流動深、流速、流量が大きいことであり、また、表土層から風化基岩層にわたる深い層で崩れた土砂が土石流になるため、広い粒度分布の材料からなることも特徴のひとつである。したがって、大規模土石流には細粒土砂が間隙流体に含まれることが考えられ、これを考慮した解析方法が不可欠である。この点に関して、これまで間隙流体の密度の増加について考慮した研究はあるが、土石流の代表粒径の増加、濃度の減少にも着目した研究は行われていない。本研究は、これらの効果をすべて考慮した上で、間隙流体に含める細粒の粒径を0~100mmに変化させて、2003年に水俣市の集川で発生した大規模土石流に適用した。
 その結果、間隙流体に含める粒径を15mmとしたときに、実現象をよく再現することを示し、大変有用な解析結果を得た。また、この細粒土砂が間隙水に取り込まれる可能性についても考察している。土石流の解析においては、計算や検証に必要なデータの収集に苦労するが、著者はこれについても精力的に実施し、解析の信頼度を高める努力を払っている点も高く評価できる。西口氏は本論文の主著者であり、独創性、将来性をもって、砂防学の発展に寄与すると認められる。
※公益社団法人砂防学会:平成26年度定時総会資料より転載