研究成果・技術情報

「第31回日本道路会議」優秀論文賞

受賞名:「第31回日本道路会議」論文賞(主催:社団法人日本道路協会)
受賞論文名と受賞者(著者)
FTIR/ATRによるアスファルト混合物の簡易劣化評価試験の検討
   川島(辻本)陽子(先端材料資源研究センター(iMaRRC) 研究員)
   新田弘之    (先端材料資源研究センター(iMaRRC) 上席研究員)
   西崎到     (先端材料資源研究センター(iMaRRC) 上席研究員)

 

日本道路会議は、道路の行政、建設、維持管理、都市計画および道路交通に取り組んでいる全国の関係者等が参画して、 道路に関する広範な問題について研究成果を発表し、意見を交換するわが国最大の会議であります。 社団法人日本道路協会の主催により、昭和27年以降ほぼ隔年ごとに開催され、その成果が期待されております。

優秀論文賞は道路技術の向上と道路事業の促進への寄与の観点から、論文内容及び発表が特に優秀と認められる論文の 著者に授与されます。

「第31回日本道路会議」優秀論文賞

 

受賞論文の概要:

FTIR/ATRによるアスファルト混合物の簡易劣化評価試験の検討

 供用中のアスファルトにおいて、交通荷重による力学的疲労だけでなく、紫外線や酸素、熱等による酸化劣化が 進行している。アスファルトの劣化は、アスファルト舗装のひび割れをはじめとして様々な破損の要因となる。 このため、アスファルトの劣化を把握し、破損の前に対策ができればより効果的な維持管理が可能となる。しかし現状では、劣化診断に多くの工程を要するため、実際には劣化の把握は行われることは少ない(図1左)。

 そこで本研究では、アスファルトの劣化を簡便に把握できる方法を開発することを目指し、アスファルトの劣化評価に活用されつつあるフーリエ変換赤外分光分析(FTIR)を用いた簡易劣化評価の検討を行った。特に、最も工程が簡便であるアスファルト混合物の状態から、アスファルトの劣化を検出する手法として、FTIR/ATRを用いた手法(図1右)の有効性を検証した。その結果、以下の研究成果が得られた。

  (1)アスファルト混合物、アスファルトバインダのいずれでも劣化に伴う1700cm-1の吸光度を検出できるがピーク高さに違いが生じた(図2参照)。

  (2) 劣化により増加した1700 cm-1付近のピークと、劣化の影響を受けない1600 cm-1付近のピーク比であるカルボニルインデックス(以下、CI)を劣化の指標としたところ、アスファルトの劣化に伴い、CI値が増加することを確認した。

  (3) 試験方法、アスファルトバインダの種類によらず、針入度(アスファルトバインダの硬さを表す指標)との相関が得られた(図3参照)。

  (4) 従来法である透過法により得られたCI値とFTIR/ATR法による測定から得られた混合物のCI値との間に高い相関関係を確認した。

アスファルト混合物の簡易劣化評価試験の検討