研究成果・技術情報

「応用生態工学会 第23回研究発表会 優秀口頭研究発表賞」受賞

受賞名:「応用生態工学会 第23回研究発表会 優秀口頭研究発表賞」受賞
論文題目:河道の平面計上が物理環境と生息場および魚類相に与える影響
受賞者:大槻 順朗(土木研究所 水環境研究グループ 自然共生研究センター 専門研究員)
    森 照貴(土木研究所 水環境研究グループ 自然共生研究センター 研究員)
    中村 圭吾(土木研究所 水環境研究グループ 河川生態チーム 上席研究員)
    萱場 祐一(土木研究所 水環境研究グループ グループ長)

 

賞の概要等:

 2019年9月27日-30日に開催された「応用生態工学会 第23回研究発表会」において、水環境研究グループ自然共生研究センター大槻順朗 専門研究員が、優秀口頭研究発表賞を受賞しました。

研究成果の概要:

 近年の豪雨災害では、多量の土砂・流木を伴う災害が頻発しており、被災を軽減するための緩衝帯として、河道の拡幅を積極的に取り入れることが検討されている。河道空間を広く取ることは河川環境の創出においても基本とされるが、河道の広がりあるいは曲がりといった平面形の変化がもたらす環境上の効果は十分に明らかにされていない。本研究では、急勾配から扇状地区間の中小河川を対象に、UAVを用いた地形と地被の調査、流況の計測、魚類の採捕を行い、その結果から直線部を基準とした湾曲部・拡幅部の比較からその特性を分析した。その結果、物理環境については、湾曲部では淵に相当する大水深・低流速領域が典型的に多いが、その一方、拡幅部では形成される環境がさまざまであり、直線部の拡幅によって生じる環境は、例えば植生などの別の影響が相対的に濃く、不確実性が高いものと考えられた。魚類相については、湾曲部では、対象河川の魚種数が少ないときほど湾曲部でのみ見られる魚種数の割合が高く、形成される「淵」への依存度が高まる。それとは逆に、拡幅部では対象河川の魚種数が多いほど拡幅部でのみ見られる魚種数の割合が高かった。これは瀬淵のような普遍度の高いものではないよどみや砂地といった特異的なハビタットが提供されることが要因として考えられる。このように、河道の平面形状の変化がもたらす影響は河川の状態に応じた特性を持つことが示唆された。

平面形状ごとの魚種数の場所依存
賞状