研究成果・技術情報

令和4年度 応用地質学会 研究発表会 「優秀講演者賞」 受賞

受賞名: 令和4年度 応用地質学会 研究発表会 「優秀講演者賞」 受賞
論文題目: 硫化鉄鉱体に含有する黄銅鉱による酸性水の発生機構について
受賞者: 地質・地盤研究グループ 地質チーム 主任研究員 昆周作
地質・地盤研究グループ 地質チーム 上席研究員 品川俊介

受賞日:2022年10月14日


贈賞組織名:一般社団法人 日本応用地質学会


賞の概要

 令和4年度 応用地質学会 研究発表会 優秀講演者賞
 同賞は、45歳以下の講演者を対象とし、座長等による採点結果に基づき選出し、授与されるものです。

研究成果の概要:

 本研究は、主要研究「環境負荷対策が必要な発生土の安全性評価に関する研究」に基づく研究です。発生土量の多い公共建設工事等では自然由来の重金属等を含む岩石の用途や処分等について問題になる場合があります.そこで本研究は、特定の重金属等を含む鉱物を確認し,酸性水や重金属等の発生・溶出機構を理解することを目的に、酸性水と重金属等の溶出が認められる硫化鉄鉱体から試料を採取し,電子顕微鏡観察を実施しました。その結果、異なる硫化鉱物が接する場合,鉱物間でガルバニック相互作用が発生し、電極電位の低い鉱物が選択的に溶出する現象を捉えました。特に黄銅鉱が選択的に酸性水の発生源になっていることを確認し、黄銅鉱が硫砒鉄鉱硫から溶出する砒素の遅延材として機能する可能性を確認しました。

アピールポイント:

 本研究は酸性水の主な発生源が黄鉄鉱であるという従来の考え方に一石を投じるものとなり、さらに砒素が遅延して溶出するメカニズムを解明したことが、今回の表彰に繋がったと思われます。このような鉱物学的知見を加えることで、自然由来重金属含有土に対して高精度かつ安全側に評価することが可能となり、さらに実際の盛土内環境における溶解反応を理解するうえで基礎的な知見となります。今後は実験を通して得られた新たな知見を基に評価手法の開発を進めていきます。

  
ガルバニック相互作用によって黄銅鉱が選択的に溶出する様子(SEM-EDS) 表彰状
ガルバニック相互作用によって黄銅鉱が選択的に溶出する様子(SEM-EDS) 表彰状