「SATテクノロジー・ショーケース2025 ベスト産業実用化賞」受賞
受 賞 名: | 「SATテクノロジー・ショーケース2025 ベスト産業実用化賞」受賞 |
受 賞 者: | 安藤秀行 (材料資源研究グループ 交流研究員) |
受賞日:令和7年1月23日(木)
贈賞組織名:一般財団法人 茨城県科学技術振興財団 つくばサイエンス・アカデミー
論文題目:AFM-IRで紐解くナノスケールでのアスファルトの劣化・再生機構
「ベスト産業実用化賞」
ベスト産業実用化賞は、SATテクノロジー・ショーケース2025で発表された発表の中から、産業技術への応用が進んでいると認められるものに贈られるものです。
日本では現在、アスファルト舗装廃材の99%以上がリサイクルされています。アスファルト舗装において、アスファルトは石や砂の接着剤としての役割を果たし、舗設後は紫外線や酸素などの影響を受けて硬く脆く”劣化”して舗装のひび割れなどの損傷原因となります。壊れたアスファルト舗装は、修繕工事等によって剥がされ、アスファルト合材プラントに運ばれた後、再生用添加剤などによって性状を回復させ、アスファルト舗装として”再生”されます。供用中のアスファルトの劣化では酸化反応による分子鎖の切断が起こるとされ、赤外分光分析(IR)を用いてカルボニル基の生成量を評価し、劣化の指標としていますが、その詳細な劣化メカニズムは明らかにされていません。一方、再生されたアスファルト舗装の性能は、再生用添加剤の組成によって異なることが報告されていますが、その原因の多くが未解明です。
本研究では、アスファルトの劣化と再生機構を微視的な手法で調べるため、試料の同一座標において物理的・化学的性質の両方をナノ寸法で測定できる原子間力顕微鏡-赤外分光法(AFM-IR)を用いたアスファルトの表面分析を試みました。その結果、酸化劣化指標であるカルボニル基が劣化によって発生・増加する様子や、回復性能が高い再生用添加剤を用いた再生アスファルトの表面構造が健全なアスファルトと相似することの直接観測に成功しました。AFM-IRに必要な試料は数mg程度の少量で、短時間での測定が可能なことから、舗装リサイクル研究の効率化も期待でき、アスファルトの分析に有効である可能性を示しました。
今後は、本機で得られる画像の解析手法や測定条件の最適化を検討しながら、繰り返し再生による影響や、改質アスファルトも対象に測定を行っていく予定です。