研究成果・技術情報

「応用生態工学会第28回新潟大会 研究奨励賞」受賞

受   賞   名: 「応用生態工学会第28回新潟大会 研究奨励賞」受賞
受   賞   者: 岡本聖矢(流域水環境研究グループ 自然共生研究センター 専門研究員)

受賞日:令和7年9月13日

贈賞組織名:応用生態工学会

論文題目:応用生態工学会 研究奨励賞

賞の概要:

本賞は、応用生態工学会分野において、研究に精励し良好な研究成果をあげており、若手研究者の模範となる者に授与されるものである。

研究成果の概要:

生物多様性維持のメカニズムを理解することは、進化学・生態学・応用生態工学分野における重要な課題です。受賞者は、これまで河川生態系の生物多様性維持機構を明らかにすることを目的に、全国レベルのビッグデータを活用した渇水現象の解析から、現地調査と遺伝子解析による生息場と遺伝的集団構造の関係性の解明まで幅広い研究を展開してきました。特に水生昆虫に着目し、その「生息場への応答」や「生息場の接続性・安定性」と生物多様性維持の関係を追究してきました。例えば、単一河川に分布するカゲロウ類の近縁3種では、それぞれの種が好む選好環境を反映するように上流から下流にかけて流程分布を示すこと、生息場の接続性が孤立的になりやすい上流を好む種ほど遺伝的分化の度合いも高いことを示しました。

このことから、生息場の選好性の差異は遺伝子流動のスケールにも影響することを示唆しました。また近年の研究では、約20年分の全国的な取水制限の記録と流量データ、水生昆虫データを組み合わせた解析から、取水制限に至るほどの流量減少時における水生昆虫の応答パターンを示し、特に流水環境に依存する分類群ほど強い負の影響を受けることを示唆しました。これらの成果は、流量変動に対する水生昆虫の応答を流水性や止水性という生息場の特徴から捉えた点でも評価をいただきました。

これらの研究成果は、生物多様性維持機構の理解を深め、将来の気候変動下での河川生物多様性保全に資する基盤的知見として評価され、奨励賞を受賞するに至りました。

- 賞状 -