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VII 新材料・未利用材料・リサイクル材を用いた社会資本整備に関する研究

→個別課題の結果要旨

研究期間:平成13年度~17年度
プロジェクトリーダー:材料地盤研究グループ長 三木博史
研究担当グループ:技術推進本部(構造物マネジメント技術)、材料地盤研究グループ(新材料、リサイクル、土質)、基礎道路技術研究グループ(舗装)、構造物研究グループ(橋梁構造)

1. 研究の必要性
 
これからの社会資本整備においては、新材料、新工法による土木構造物の高性能化やコスト縮減、ならびに、従来は使われずに廃棄されていた、または利用率の低かった未利用材料や各種廃棄物のリサイクル材の有効利用による循環型社会形成への貢献がこれまで以上に強く求められるようになってきている。

2. 研究の範囲と達成目標
 新材料、未利用材料、リサイクル材の利用技術のうち、本重点プロジェクト研究では、高強度鉄筋、FRPなどの新材料の土木構造物への利用技術、規格外骨材などの未利用材料の有効利用技術、建設廃棄物のうち技術開発の余地が多く残されている再生骨材や有機質廃材のリサイクル技術、および公共事業においてユーザーが安心して使える指針の作成が強く求められている他産業廃棄物のリサイクル材の利用技術の開発を行うことを研究の範囲として、以下の達成目標を設定した。
    (1) 高強度鉄筋、FRPなどの土木構造物への利用技術の開発
    (2) 規格外骨材などの未利用材料、有機質廃棄物の利用技術の開発
    (3) 他産業廃棄物のリサイクル技術とリサイクル材利用技術の開発

3. 個別課題の構成
 
本重点プロジェクト研究では、上記の目標を達成するため、以下に示す研究課題を設定した。
    (1) 高強度鉄筋の利用技術の開発に関する研究(平成13~16年度)
    (2) FRPの道路構造物への適用に関する調査(平成13~17年度)
    (3) 再生骨材・未利用骨材の有効利用技術の開発(平成13~17年度)
    (4) 下水汚泥を活用した有機質廃材の資源化・リサイクル技術に関する調査(平成14~17年度)
    (5) 他産業リサイクル材の利用技術に関する研究(平成11~17年度)
    (6) 他産業リサイクル材の舗装への利用に関する研究(平成14~16年度)
このうち、平成13年度は(1)、(2)、(3)、(5)の4課題を実施している。

4. 研究の成果
 
本重点プロジェクト研究の個別課題の成果は、以下の個別論文に示すとおりである。なお、「2. 研究の範囲と達成目標」に示した達成目標に関して、これまでに実施してきた研究と今後の課題について要約すると以下のとおりである。


(1) 高強度鉄筋、FRPなどの土木構造物への利用技術の開発
 
「高強度鉄筋の利用技術の開発に関する研究」では、兵庫県南部地震を契機として見直された耐震設計基準によって過密な配筋が要求されている鉄筋コンクリート(RC)の柱部材の施工性を向上させる方法として、約1400 MPaの降伏点を持つ高強度鉄筋をせん断補強鉄筋として用いたRC部材のせん断載荷試験を行い、高強度鉄筋によるせん断補強効果について検討した。その結果、普通強度の鉄筋を用いたRC部材ではぜい性的なせん断破壊形態を示していたものが、高強度せん断補強鉄筋を用いることにより、曲げ降伏が先行し、じん性の向上に効果があることが分かった。ただし、いずれの供試体も高強度せん断補強鉄筋が降伏する以前に破壊が生じており、従来のせん断強度評価式の見直しが必要なことが判明した。
 今後は、高強度鉄筋を用いてせん断補強した鉄筋コンクリート構造物の耐荷力算定手法(耐荷性能の評価手法)についてさらに検討を進め、高強度鉄筋を用いた鉄筋コンクリート部材の設計方法の開発を目指していく予定である。
 「FRPの道路構造物への適用に関する調査」では、海塩による厳しい腐食環境に置かれている沿岸地域の道路構造物に対し、耐食性に優れたFRP(繊維強化プラスチック)材料の適用性を検討した。FRPを構造部材として道路構造物へ適用するにあたっては、接合箇所の力学特性がとくに重要となる。そこで、GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)を対象に、ボルト接合について静的引張試験および疲労試験を行い、接合部の力学特性について検討を行った。その結果、(1) ボルト軸力の増大とともに接合強度が増加すること、(2) 疲労試験の荷重振幅を大きくすると疲労破壊に至る回数が小さくなるが、実際の安全率を考慮した設計では、その影響はほとんど現れないことなどが分かった。
 今後は、接合箇所の長期強度について、樹脂クリープによる軸力抜けの検討などを行い、FRP材料を用いた床版構造の力学特性の解明、構造物としての利用性の評価、さらにはFRP材料の床版への適用方法を提案していく予定である。また、研究期間の後半では、FRP材料の車道橋への適用方法も提案していく予定である。

(2) 規格外骨材などの未利用材料、有機質廃棄物の利用技術の開発
 
「再生骨材・未利用骨材の有効利用技術の開発」では、再生クラッシャーランで製造した再生骨材を使用してコンクリートの凍結融解耐久性を検討した。この結果、空気量、水セメント比、単位水量の調整だけでは凍結融解耐久性の改善は難しいことが分かった。
 今後は、再生骨材、規格外骨材がコンクリートの性能に及ぼす影響について引き続き検討を進め、再生骨材を使用する場合の品質評価規準案の提案、再生骨材、規格外骨材を有効利用するために必要な各種要素技術の開発を行っていく予定である。

(3) 他産業廃棄物のリサイクル技術とリサイクル材利用技術の開発
 
「他産業リサイクル材の利用技術に関する研究」においては、公共事業への適用可能性が高いと考えられる他産業リサイクル材を40種程度抽出し、工学的性能、環境安全性、施工実績などからその適用性(利用可能分野、用途など)の評価を行った。
 今後は、これらの検討結果をとりまとめて「他産業リサイクルの利用技術マニュアル」を作成するとともに、新しいリサイクル材料についても、評価の固まったものから順次、利用技術マニュアルに採り入れ、マニュアルの充実を継続的に図っていく予定である。


個別課題の成果

7.1 高強度鉄筋の利用技術の開発に関する研究

    研究予算:運営費交付金(道路整備勘定)
    研究期間:平13~平16
    担当チーム:技術推進本部(構造物マネジメント技術)
    研究担当者:河野広隆、渡辺博志
【要旨】
 今年度は、せん断補強鉄筋として約1400MPa の降伏点を持つ高強度鉄筋を用いた鉄筋コンクリート(RC)部材のせん断載荷試験を行い、高強度鉄筋によるせん断補強効果について検討した。その結果、普通強度の鉄筋を用いたRC 部材では、ぜい性的なせん断破壊形態を示していたものが、高強度せん断補強鉄筋を用いることにより、曲げ降伏が先行し、じん性の向上に効果があることが分かった。ただし、いずれの供試体も高強度せん断補強鉄筋が降伏する以前に破壊が生じていて、従来のせん断強度評価式において単純に鉄筋の降伏強度を用いることができないことが判明した。
キーワード:鉄筋コンクリート、せん断、高強度鉄筋、じん性、終局強度


7.2 FRPの道路構造物への適用に関する調査

    研究予算:運営費交付金(道路整備勘定)
    研究期間:平13~平17
    担当チーム:材料地盤研究グループ(新材料)
    研究担当者:明嵐政司、木嶋健、西崎到
【要旨】
 沿岸地域の道路構造物は海塩の影響による厳しい腐食環境におかれており、防食対策にかかる費用は膨大なものとなっている。このため、高耐食性構造物の構築技術の一つとして、耐塩害性能に優れた新しい構造材料の開発・導入が求められている。本研究では、耐塩害性能に優れた構造材料としてFRP(繊維強化プラスチック)を取り上げ、床版および車道橋等の道路構造物へ構造部材として適用することを検討した。FRPを構造部材として道路構造物へ適用する場合には、接合箇所の力学特性が非常に重要となる。本稿では、FRPの接合箇所に関して、基礎的な実験を行った結果を報告する。
キーワード:FRP、接合、ボルト軸力、静的引張試験、疲労試験


7.3 再生骨材・未利用骨材の有効利用技術の開発

    研究予算:運営費交付金(一般勘定)
    研究期間:平13~平17
    担当チーム:技術推進本部(構造物マネジメント技術)
    研究担当者:河野広隆、片平博
【要旨】
 本研究は、コンクリート解体材および従来廃棄されていた規格外骨材をコンクリート用骨材として有効利用するための要素技術の開発と品質評価規準の提案を目指すものでる。13年度は、一般的に生産される再生クラッシャーラン程度の品質の再生骨材を使用したコンクリートの凍結融解耐久性について検討した。一般に再生骨材を使用したコンクリートは凍結融解耐久性が劣るが、これに対して空気量、単位水量、水セメント比等の配合条件を工夫することによって凍結融解耐久性の改善が可能かどうか、実験的な検討を行った。この結果、今回の配合の範囲では凍結融解耐久性の改善は見られなかった。
キーワード:再生骨材、凍結融解耐久性、圧縮強度、長さ変化、空気量


7.4  他産業リサイクル材の利用技術に関する研究

    研究予算:運営費交付金(一般勘定)
    研究期間:平11~平17
    研究担当グループ:材料地盤研究グループ(新材料)
    研究担当者:明嵐政司、中村俊彦
【要旨】 
 本研究は他産業リサイクル材の適用用途に応じた評価手法を提案するとともに公共事業への適用性を評価することを目標として実施するものである。
 平成13年度は、他産業リサイクル材の公共事業への利用可能性を明らかにするため、他産業リサイクル材の抽出、性質の評価方法、公共事業への適用可能性に関する検討を行った。本検討の成果として、以下のことが明らかとなった。(1)公共事業への適用可能性が高いと考えられる他産業リサイクル材を40種程度抽出した。(2)各他産業リサイクル材の「工学的性能」については従来の建設材と同様の試験法により適用可能であるものが多かったが、「環境安全性」については適用前に確認が必要なものが多く使用には留意が必要なことが明らかになった。(3)性質と施工実績などから評価した結果、検討対象とした多くのリサイクル材は公共事業への適用可能性が高いことが明らかになった。
キーワード:リサイクル材、他産業、評価