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XIV 超長大道路構造物の建設コスト縮減技術に関する研究

→個別課題の成果要旨

研究期間:平成14年度~17年度
プロジェクトリーダー:構造物研究グループ長 佐藤弘史
研究担当グループ:耐震研究グループ(振動、耐震)、基礎道路技術研究グループ(舗装、トンネル)、構造物研究グループ(橋梁構造、基礎)

1. 研究の必要性
 豊かで質の高い暮らしを実現するためには、複数の都市あるいは地域が連携し、それぞれの資源あるいは機能を共有することが重要である。海峡を挟んだ複数の地域において、このような地域の交流と連携を図るため、超長大道路構造物の建設コストを縮減する技術の開発が求められている。

2. 研究の範囲と達成目標
 本研究では、建設コスト縮減の可能性のある新たな構造あるいは施工法に着目し、吊橋については、新形式主塔および基礎の耐震設計法の開発、耐風安定性に優れた上部構造形式の開発、薄層化舗装およびオープングレーチング床版技術の開発を行い、トンネルについては、トンネルボーリングマシンを用いたトンネル設計法の開発を行うことを研究の範囲とし、以下の達成目標を設定した。
   (1) 超長大橋の新しい形式の主塔、基礎の耐震設計法の開発
   (2) 耐風安定性に優れた超長大橋上部構造形式の開発
   (3) 薄層化舗装、オープングレーチング床版技術の開発
   (4) 超長大トンネル用トンネルボーリングマシンを用いたトンネル設計法の開発

3. 個別課題の構成
 本重点プロジェクト研究では、上記の目標を達成するため、以下に示す研究課題を設定した。
   (1) 超長大橋下部構造の設計・施工の合理化に関する試験調査(平成10~17年度)
   (2) 大規模地震を想定した長大橋梁の耐震設計法の合理化に関する試験調査(平成10~17年度)
   (3) 経済性・耐風性に優れた超長大橋の上部構造に関する調査(平成11~17年度)
   (4) 薄層化橋面舗装の施工性能向上に関する研究(平成14~15年度)
   (5) 経済性に優れた長大トンネルの掘削方法に関する試験調査(平成11~15年度)
 このうち、平成14年度は(1)~(5)の5課題を実施している。

4. 研究の成果

(1) 超長大橋の新しい形式の主塔、基礎の耐震設計法の開発
 本目標に関し、「大規模地震を想定した長大橋梁の耐震設計法の合理化に関する試験調査」では、経済性に優れるRC製主塔を対象に地震時挙動特性及び地震後に許容される損傷を検討するための安定性解析を実施した。さらに、鋼製主塔に対して耐震設計上支配的となる主塔基部の地震時限界状態について耐荷力特性、損傷特性の観点から解析的に明らかにした。これらの検討成果とともに、今まで検討してきた模型載荷実験による耐力・変形特性、主塔の地震応答特性及び耐荷力特性を併せて、RC製主塔及び鋼製主塔に対する地震時限界状態を考慮した耐震照査法(案)のとりまとめを行った。
 また、地盤の非線形性化を考慮した軟岩上直接基礎の地震時挙動を把握し、耐震性照査法を提案するために、人工軟岩上の直接基礎を対象として、地震による地盤の軟化剛性と基礎底面での滑動と剥離を考慮した非線形動的FEM解析を行い、動的遠心模型実験結果と比較することによって基礎の回転角および水平変位量評価方法の妥当性を検討した。その結果に基づき、軟岩上直接基礎の地震時変位量予測法を提案した。
 「超長大橋下部構造の設計・施工の合理化に関する試験調査」では、地震時に水中基礎に作用するサクションの効果について、基礎底面下への水の回り込みと浮上り抵抗の関係を調べるための室内模型実験を行った。また、その結果に基づいてサクション力を引張ばねとして考慮したフレームモデルによる動的解析を行い、基礎の地震時応答解析手法を検討した。
 今後は、高機能材料などを用いた新形式橋梁構造の提案、およびその耐震設計法の提案を行うとともに、サクション基礎、パイルドファウンデーションなどの新形式基礎の構造特性、動的応答特性を解明し、設計法の提案を行う予定である。

(2) 耐風安定性に優れた超長大橋上部構造形式の開発
 本目標に関し、「経済性・耐風性に優れた超長大橋の上部構造に関する調査」では、耐風安定性を効率的に推定するため、フラッター解析手法に関する研究を実施した。すなわち、これまでに提案している開口部を有する2箱桁断面の構造形式を対象として、フラッター解析手法の精度向上を図るために解析モデルの改良を行った。その結果、吊橋のケーブル・ハンガー関して、従来無視されてきた曲げ剛性を考慮することなどにより、吊橋模型の振動特性を精度良く推定できることが明らかとなった。今後は、ハイブリッド方式などに着目し、耐風安定性を確保しつつ上部構造コストを縮減する方策について研究を進める予定である。

(3) 薄層化舗装、オープングレーチング床版技術の開発
 本目標に関し、「薄層化橋面舗装の施工性能向上に関する研究」では、施工温度の適用範囲が広く、施工性に優れた薄層化橋面舗装技術を開発するため、SMA(砕石マスチックアスファルト)について混合物配合を変化させて締固め度や床版との付着性への影響を調査した。その結果、使用する骨材配合により締固め温度の低下による締固め性・接着性への影響度が異なることが分かり、橋面用混合物の選定にはこれらを考慮する必要があることが分かった。今後は、配合についてさらに研究を進め、薄層化橋面舗装技術の提案を行う予定である。
 また、「経済性・耐風性に優れた超長大橋の上部構造に関する調査」では、オープングレーチング床版の疲労耐久性に着目し、横部材剛性を増加させ改良した試験体を用いて輪荷重走行試験を実施した。試験の結果、改良前後で疲労亀裂の発生寿命はほぼ同じであるものの亀裂発生位置が異なることが確認された。今後は、これまでの一連の疲労試験結果を基に、疲労耐久性に配慮した構造について引き続き研究を進める予定である。

(4) 超長大トンネル用トンネルボーリングマシンを用いたトンネル設計法の開発
 本目標に関し、「経済性に優れた長大トンネルの掘削方法に関する試験調査」では、小断面TBMトンネルにおける計測データに基づき、機械データに着目した場合の地山状態と補助工法との関係の分析および支保工に作用する荷重の評価を実施した。その結果、比較的大規模なトラブルでは機械データに基づいてその発生の予測が可能であること、また、地山等級がC級とD級で支保に作用する荷重の傾向が分かれ、前者は剥落を防止する程度、後者は個別の荷重の評価に基づく支保工が必要となることが分かった。今後は、大断面TBMトンネルにおける地山評価方法と支保設計に使用する解析モデルの適用性の検証を実施し、 TBMトンネルにおける地山評価手法と支保設計法の提案を行う予定である。


個別課題の成果

14.1 超長大橋下部構造の設計・施工の合理化に関する試験調査

    研究予算:運営費交付金(道路整備勘定)
    研究期間:平10~平17
    担当チーム:構造物研究グループ(基礎)
    研究担当者:福井次郎、西谷雅弘、大塚雅裕
【要旨】
 現在検討が進められている新交通軸における超長大橋建設に関する技術検討の中で、大水深基礎の建設技術が課題の一つに挙げられている。14年度は、地震時に水中基礎に作用するサクションの効果について、基礎底面下への水の回り込みと浮上り抵抗の関係を調べるための室内模型実験を行った。また、その結果に基づいてサクション力を引張ばねとして考慮したフレームモデルによる動的解析を行い、基礎の地震時応答解析手法を検討した。
キーワード:水中構造物、サクション、模型実験、動的応答


14.2 大規模地震を想定した長大橋梁の耐震設計法の合理化に関する試験調査(1)

    研究予算:運営費交付金(道路整備勘定)
    研究期間:平10~平17
    担当チーム:耐震研究グループ(振動)
    研究担当者:田村敬一、岡村未対、谷本俊輔
【要旨】
 長大橋梁基礎の現行耐震設計法は力の釣合いに基づく安全率を照査するものであり、地震時における基礎の変位量を照査項目とする、より合理的な設計法を確立する必要がある。このため本研究は、地盤の非線形性化を考慮した軟岩上直接基礎の地震時挙動を把握するとともに、耐震性照査法を提案することを目的として実施するものである。
 平成14年度は、人工軟岩上の直接基礎の動的遠心模型実験を対象とし、地震による地盤の軟化剛性と基礎底面での滑動と剥離を考慮した非線形動的FEM解析により基礎の回転角及び水平変位量を求め、実験結果と解析結果を比較することによって回転角および水平変位量評価方法の妥当性を検討した。その結果に基づき、軟岩上直接基礎の地震時変位量予測法を提案した。
キーワード:長大橋梁基礎、地震時変位量、直接基礎、軟岩


14.3 大規模地震を想定した長大橋梁の耐震設計法の合理化に関する試験調査(2)

    研究予算:運営費交付金(道路整備勘定)
    研究期間:平10~平17
    担当チーム:耐震研究グループ(耐震)
    研究担当者:運上 茂樹、河藤 千尋
【要旨】
 巨大地震の断層直近に計画される中央支間長2,000mを越える超長大橋に対する合理的・経済的な耐震設計法を開発することを目的とする。平成14年度は、経済性に優れるRC製主塔を対象に地震時挙動特性及び地震後に許容される損傷を検討するための安定性解析を実施した。さらに、鋼製主塔に対して耐震設計上支配的となる主塔基部の地震時限界状態について耐荷力特性、損傷特性の観点から解析的に明らかにした。これらの検討成果とともに、今まで検討してきた模型載荷実験による耐力・変形特性、主塔の地震応答特性及び耐荷力特性を併せて、RC製主塔及び鋼製主塔に対する地震時限界状態を考慮した耐震照査法(案)のとりまとめを行った。
キーワード:超長大橋、RC製主塔、鋼製主塔、地震時限界状態、耐震照査法


14.4 経済性・耐風性に優れた超長大橋の上部構造に関する調査

    研究予算:運営費交付金(道路整備勘定)
    研究期間:平11~平17
    担当チーム:構造物研究グループ(橋梁構造)
    研究担当者:村越 潤、麓 興一郎、高橋 実、稲垣由紀子
【要旨】
 新交通軸の一部を形成する超長大橋を経済的に建設するためには、従来の長大橋を超える新たな技術開発が必要である。とりわけ、超長大橋においては、耐風性の確保が重要の問題のひとつとなっている。本調査は、耐風性・経済性に優れた超長大橋上部構造を提案することを目的とするものである。
 平成14年度は、これまでに提案している開口部を有する2箱桁断面の構造形式について、フラッター解析手法の精度向上を図るため、今まで考慮してこなかったケーブルとハンガーの曲げ剛性について解析モデルに取り入れる検討を行った。また、オープングレーチング床版の疲労耐久性について、前年度結果を踏まえ、局部応力の低減を図るために横部材剛性を増加させた改良試験体に対して輪荷重走行試験を実施した。その結果、解析モデルの検討については、ケーブルとハンガーの曲げ剛性を反映した解析モデルでは、フラッター解析の精度向上において必要なねじれの振動数の解析値が計測値とほぼ整合することを確認した。オープングレーチング床版の疲労耐久性については、改良前後で疲労亀裂の発生寿命はほぼ同じであるものの亀裂発生位置が異なることが確認された。
キーワード:超長大橋、耐風安定性、フラッター解析、オープングレーチング床版、疲労、輪荷重


14.5 薄層化橋面舗装の施工性能向上に関する調査

    研究予算:運営費交付金(道路整備勘定)
    研究期間:平14~平15
    担当チーム:基礎道路技術研究グループ(舗装)
    研究担当者:吉田 武、新田弘之
【要旨】
 長大橋の建設コスト縮減方策のひとつとして、橋面舗装の薄層化により死荷重の軽減を図る方法が考えられる。しかし、橋面舗装では、アスファルト混合物の早期温度低下が起こりやすく、混合物の硬化により十分な締固め度が得られない場合が考えられる。このため、施工時の温度低下を考慮した混合物配合や舗装構造を開発する必要がある。本調査では、薄層化橋面舗装用混合物としてのSMAについて混合物配合を変化させて締固め度や床版との付着性への影響を検討した。
 その結果、使用する骨材配合により締固め温度の低下による締固め性・接着性への影響度が異なることが分かり、橋面用混合物の選定にはこれらを考慮する必要があることが分かった。
キーワード:橋面舗装、砕石マスチックアスファルト、防水性、中温化技術


14.6 経済性に優れた長大トンネルの掘削方法に関する試験調査

    研究予算:運営費交付金(道路整備勘定)
    研究期間:平11~平15
    担当チーム:基礎道路技術研究グループ(トンネル)
    研究担当者:真下英人,砂金伸治,遠藤拓雄
【要旨】
 トンネルボーリングマシン(TBM)を用いたトンネル掘削は施工速度が速く,支保工の低減も図れるため長大トンネルの建設費を縮減する有力な方策となるが,地質変化の激しい日本で大断面トンネルへ適用するには地山状態を考慮した支保構造の設計法を提案することが必要である.
 平成14年度は小断面TBMトンネルにおける計測データに基づき,機械データに着目した場合の地山状態と補助工法との関係の分析および支保工に作用する荷重の評価を実施した.その結果,比較的大規模なトラブルでは機械データに基づいてその発生の予測が可能であること,また,地山等級がC級とD級で支保に作用する荷重の傾向が分かれ,前者は剥落を防止する程度,後者は個別の荷重の評価に基づく支保工が必要となることが分かった.
キーワード:トンネル,トンネルボーリングマシン,機械データ,補助工法,荷重,現地計測