国立研究開発法人 土木研究所

トピックス一覧

大河津分水路改修事業の起工式を迎えて

 平成30年3月17日に大河津分水路改修事業の起工式が新潟県長岡市寺泊で約300名が出席し盛大に挙行され、 土木研究所職員も招待を受け列席してきました。関係各位のこれまでのご努力に敬意を表するとともに、安全に1日も早く竣工することを衷心より祈念申し上げます。

大河津分水路改修事業の起工式を迎えて 大河津分水路改修事業の起工式を迎えて
大河津分水路改修事業の起工式を迎えて

 本事業は、我が国の治水史に残る大事業であり、多くの土木研究所の職員(研究調整監、水工研究グループ長、地質研究監、上席研究員(水環境研究グループ河川生態チーム)、上席研究員(水工研究グループ水理チーム)が関わってきましたのでご紹介します。

 大河津分水路は新潟市、燕市など信濃川の下流部を洪水から守るため大正11年(1922)に通水を始めた約10kmの人工放水路です。この分水路の補修事業(昭和2~6年)を指揮した 内務省新潟土木出張所長であった青山 士(あおやま・あきら)が工事の竣工を記念した有名な言葉「万象ニ天意ヲ覚ル者ハ幸ナリ、人類ノ爲國ノ爲」が、分水地点付近の記念碑に刻まれています。

 この放水路工事は、沿岸部の弥彦山地を掘削して日本海に繋ぐ難工事であり、掘削量を減らすために掘削区間を急勾配にして狭窄させており、第二床固で河床低下を防いでいます。

 この度の改修事業は、流域全体の治水安全度向上、信濃川中流部の水位低下を目指して、この狭窄部を拡幅するとともに、建設後90年以上が経過し老朽化等が顕著になった第二床固等の構造物を更新するものです。

 北陸地方整備局信濃川河川事務所は、本事業の円滑な実施に向けて、技術的に高度な検討が必要なことより、学識経験者を交えて検討をしてきました。この検討に冒頭の職員が参加しました。

 議論のポイントは以下の通りです。

 ・新第二床固の諸元
 ・新第二床固下流の減勢区間(減勢工、護床工、護岸、根固)の諸元
 ・新第二床固に併設される魚道(水路形式、呑口、吐口)の諸元
 ・工事期間中の流況

 数値計算と模型実験(平面、水路)を融合して検討を重ねてきました。

 全体の事業期間は平成44年度まで、新第二床固の事業期間は平成38年度までと計画されており、平成30年度よりいよいよ新第二床固に着手する運びとなりました。

 改めて、工事の安全を祈念するとともに、今後とも土研としても見守って参りたいと考えています。

水理模型実験(海域沖1500mから河道部約2km)模型縮尺:1/50
水理模型実験(海域沖1500mから河道部約2km) 模型縮尺:1/50

(裏面)第二床固は、河床の洗掘を防いで河道の勾配を安定させ、河川の縦断形状を維持する施設で、上流にある複数の床留等とともに、大河津分水路を守ってきました。
 第二床固が位置する河口部は、川幅が狭く河床勾配が急なため、水勢が強く、また直上流右岸では過去に大規模な地すべりがあることから、第二床固が果たす役割は非常に大きく、副堰堤(昭和47年完成)や 減勢工(バッフルピア、平成2年完成)と併せて、大河津分水路の要と言えます。

 しかし、完成から80年以上が経過し、度重なる洪水によるダメージが蓄積しており、河口部の拡幅に伴い、その役割を新しい床固にバトンタッチする予定です。

(裏面)平成27年度に着手した大河津分水路改修では河口部を拡幅することで、通水断面を拡大して、洪水に対する安全性が向上します。
 現在の第二床固は老朽化が激しく、機能の低下が懸念されていることから、河口部の拡幅に併せ、新しい第二床固を設置します。その施設の幅は現在よりも100m大きくなり、 高さは同じT.P.+5.0mで、現在ある副堰堤の下流に位置する予定です。
 この第二床固と併せて設置する減勢工や護床工が一体となり、上流にある複数の床留とともに、大河津分水路の河床安定を図るものです。