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国土交通省地方整備局のダム技術伝承を支援!
-「九州グラウト部会」-

 平成29年9月21日(木)~22日(金)の2日間、国土交通省九州地方整備局のダム技術者育成等を目的として設置されている「九州グラウト部会」が、 i-Constructionを導入して現在建設中の大分川ダム(おおいたがわだむ)(堤高91.6mの内部土質遮水壁型ロックフィルダム:写真1参照)サイトにおいて開催されました。 当方(理事 山口嘉一)は、九州地方整備局からの依頼を受け、部会に参加し、技術的な指導・助言を行ってきました。

 「九州グラウト部会」は、九州管内における国土交通省のダム担当技術者の技術力向上を図るため、ダムの主要技術の一つであるグラウチング1)に関して、 各ダム現場での実績事例や課題等に関する意見交換や議論を行い、また最新技術等に関する情報共有を図り、担当職員の技術向上及び円滑な事業進捗を図ることを目的として平成20年に設立され、 第1回会合が開催されました。当方は、本部会設立時からアドバイザーとして参加し、継続的に技術的な指導・助言を行ってきました。

 本部会では、委員である地方整備局の技術者による積極的な取り組みの結果、九州管内の建設ダムへの技術的貢献を行うとともに、各種学会に検討成果をとりまとめた論文等の投稿を行ってきています。 また、こうした取り組みを通して、技術者間での情報共有、若手技術者の育成に大きく貢献してきています。本部会の活動に対して、平成24年には、一般社団法人ダム工学会より技術貢献賞2)を授与されました。 なお、今回の部会の冒頭では、部会長の交代(若返り)、若手技術者の委員追加の紹介があり、部会の活動が活性化しているだけでなく、部会の新陳代謝を積極的に進めていることがわかりました。

 今回の部会では、部会の開催場所である大分川ダムにおいて鋭意進められているダム基礎グラウチングの施工状況の確認や合理化の検討結果などについて、施工担当者からの説明、部会員による議論が行われました(写真2参照)。 当方からは、グラウチングの注入仕様や施工範囲の設定根拠について論理立ててわかりやすい整理方法、合理化検討時の注意点などについてコメントしました。 また、新しいダム型式である台形CSG(Cemented Sand and Gravel)ダム型式を採用した本明川ダム(ほんみょうがわだむ)(現在、調査設計段階)において、 基礎地盤のグラウチングによる遮水性改良の特性の確認のために実施する予定のグラウチング試験計画について、基礎地盤の透水性状とともに、試験担当者から説明がなされ、その後に質疑応答が行われました。 当方からは、グラウチング試験における注入仕様(注入圧力、グラウト配合など)の設定、結果の評価における留意点などについて助言を行いました。 本明川ダムにおけるグラウチング試験は今秋に行われる予定で、その際には試験サイトにおける部会委員における白熱した議論が期待されます。

 会議後、堤体盛立てが本年5月に完了している大分川ダムサイトを視察する(写真3参照)ともに、ダム基礎グラウチングの施工において基礎地盤から採取されたボーリングコア3)を観察しながら、 基礎地盤の透水性状やグラウチングによる改良特性について議論しました(写真4参照)。

 今後も、継続的に本部会に参加し、グラウチングという主検討対象技術にとどまらず、そこを一つのきっかけとしてより広がりのあるダム技術支援を行うことで、国土交通省のダム技術者の技術力向上に貢献したいと考えています。

1)グラウチングとは、セメントを主材とした懸濁液(グラウト)をダム基礎地盤に注入し、ダムの基礎地盤の所要の遮水性の確保や弱部補強による基礎地盤の均一性向上を図るための最も基本的でかつ施工実績の多い工法です。

2)「http://www.jsde.jp/gakkaishou/shou_list.html#anchor_h24」参照。

3)ボーリングコアとは、基礎地盤の地質調査などを目的に、地盤中に細く長い穴を掘り、地盤から抜き取った円柱形の試料です。

写真1 現在建設中の大分川ダム 写真2 九州グラウト部会の会議の状況
写真1 現在建設中の大分川ダム 写真2 九州グラウト部会の会議の状況
写真3 大分川ダムサイトの視察状況 写真4 大分川ダム基礎地盤のボーリングコアの観察状況
写真3 大分川ダムサイトの視察状況 写真4 大分川ダム基礎地盤のボーリングコアの
観察状況