国立研究開発法人 土木研究所

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山口理事、佐々木地質研究監等が九州地方整備局のダム関係技術職員の技術力向上を支援
-平成30年度九州グラウト部会-

 平成31年1月31日(木)~2月1日(金)の2日間、国土交通省九州地方整備局のダム関係技術職員の技術力向上等を目的として設置されている「九州ダム技術検討会」の部会である「九州グラウト部会」の平成30年度会議が、熊本県南阿蘇村で建設中の立野ダムにおいて開催されました(写真-1)。

 「グラウト」とは、ダムが確実に水を貯留するために、建設時に地盤に注入しその遮水性を向上させるための材料(一般にセメントミルク)のことで、その注入工事をグラウチングといいます。九州地方には新しい地質時代の火山岩類など、グラウチングが難しい地質が広く分布しているため、九州地方整備局では平成20年から本部会を設置、開催しており、今回は13回目の開催となります。山口理事や佐々木地質研究監は部会の初期からアドバイザーとして参画しており、本部会の活動は平成24年にはダム工学会で技術貢献賞を受賞しています。

 今回の会議には、土木研究所から山口理事、佐々木地質研究監をはじめ計6名が出席しました。また、国土技術政策総合研究所からは、大規模河川構造物研究室の金銅室長と佐藤主任研究官が出席しました。初日の会議では、九州地方整備局の建設ダムである立野ダム、本明川ダム等から、グラウチング等に関する技術的な取り組みに関する報告がなされ、山口理事等が技術的なアドバイスを行いました。

 その後、国土技術政策総合研究所の金銅室長から「ダムの安全とリスク認識」をテーマとした講演がなされたのに続き、佐々木地質研究監が「今後の水理地質構造調査に必要と考えられること-地質の複雑性と止水リスク-」というテーマで話題提供を行いました(写真-2)。発表では地質・地盤リスクとそのマネジメントに関し事例を交えた解説を行った上で、ダムにおける止水リスクを最小化するためには、地質学的な評価に重きを置いた体系的な水理地質構造調査が必要との認識を示し、合わせて体系化に向けて必要となる技術開発とその方向性や課題について解説しました。

 翌日には本年度より本体工事を実施している立野ダムを視察しました。立野ダムは白川流域の洪水被害を防ぐことを目的としたダムで、堤高約90m、堤頂長約200mの曲線重力式コンクリートダムであり、洪水調節専用のため通常時は貯水を行わない「流水型ダム」として建設されます。今回の会議では、グラウンチング試験に関するボーリングコアや試験施工現場、基礎掘削現場を視察し、試験の実施状況や掘削面で見られる地質性状について、意見交換がなされました(写真-3~5)。会議の最後には参加者全員で立野ダム建設予定地を背景に写真撮影を行い、会議は無事に終了しました(写真-6)。

 今後も継続的に九州グラウト部会に参加し、現場と課題を共有し、必要な情報提供や意見交換を行うことで国土交通省のダム技術者の技術力向上に貢献したいと考えています。

写真-1 グラウト部会開催状況 写真-2 佐々木地質研究監からの報告
写真-1 グラウト部会開催状況 写真-2 佐々木地質研究監からの報告
写真-3 ボーリングコア観察 写真-4 グラウチング試験施工現場
写真-3 ボーリングコア観察 写真-4 グラウチング試験施工現場
写真-5 地質状況に関する意見交換 写真-6 グラウト部会参加者
写真-5 地質状況に関する意見交換 写真-6 グラウト部会参加者