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インドネシア共和国公共事業・国民住宅省道路研究所と研究連携に関する覚書を締結

 2019年3月5日にインドネシアの首都のジャカルタにあるインドネシア共和国公共事業・国民住宅省において、国立研究開発法人土木研究所とインドネシア共和国公共事業・国民住宅省道路研究所(IRE)との間に 研究連携に関する覚書が締結されました。これまで、2009年に締結された国土技術政策総合研究所とIREとの間の覚書に基づき、道路技術に関する研究連携が進められ、土木研究所も参画してきましたが、 この度、新たに土木研究所とIREとの間で今後5年間の研究連携に関する覚書を締結することになりました。

・研究連携の内容

 今回締結された覚書では、舗装、トンネル、軟弱地盤、土工構造物を主な対象分野としています。これまで取り組んできた舗装とトンネルに加えて土工構造物が新たに加わりました。 また、軟弱地盤については、2014年に寒地土木研究所とIREの間で締結された研究連携に関する覚書に基づき、研究に取り組んでいます。今回、覚書は統合されましたが、研究連携の内容は継続されます。

・署名式の概要

 当日の署名式にはインドネシア共和国研究開発庁長官と3者の代表が出席しました(写真1,2)。研究開発庁のLukman Hakim長官の挨拶の中では、研究連携がインドネシアのインフラ開発や両国の 協力関係の促進に寄与することへの期待が示されました。続いてIREのDeded P. Sjamsudin所長の挨拶では、研究連携の成果の活用や経験と知識の共有に対する期待が示されました。 これらを受けて、土木研究所からは、西川理事長の代理として辻道路技術研究グループ長が挨拶を行い、これまで続けてきたIREと土木研究所、国土技術政策総合研究所の3者の研究連携は今後も同様に展開していくこと、 新たな土木研究所とIREとの研究連携の覚書により、研究連携の活動の幅が拡がることなどへの期待を示しました。

写真-1 署名式の参加者 写真-2 土木研究所とIREとの署名
写真-1 署名式の参加者 写真-2 土木研究所とIREとの署名

 現地ではインドネシアにおけるインフラ開発が活発になっているという情報もありました。研究連携によって日本の技術がインドネシアの政府関係者や技術者に周知されることで、 日本の技術が活用される機会が増えていくことが期待されます。

これまで実施されてきた舗装、トンネル、軟弱地盤の研究連携の概要を以下に紹介します。

舗装

「舗装」に関するIREとの活動経緯

  • 研究内容(背景・目的)
     インドネシアでは、ブトン島を中心に「AsButon」と呼ばれる天然ロックアスファルトが産出されており、現地では主に軽交通道路における浸透式マカダム舗装等に用いられています。 このAsButonの埋蔵量が膨大であること、コストが安いこと等によりインドネシアではさらなる利活用が期待されています。国立研究開発法人土木研究所とインドネシア国道路研究所(IRE)は 2011年より共同研究を開始し、AsButonの舗装材料としての更なる有効利用に向け、検討を行っています。
  • これまでの主な活動
     土木研究所(舗装チーム、iMaRRC)はAsButonの材料性状およびアスファルト混合物性状等の確認等を行い、グースアスファルト舗装(鋼床版舗装の基層(写真-1))に用いられている 天然アスファルト(トリニダッドレイクアスファルト)の代替品としての有効利用が可能であることを明らかにしました。
2011年7月
・バリにて、AsButonに関する研究計画を協議し,利用形態(Low-Cost、Normal、Advanced Use)毎に試験調査を推進
2017年9月
・インドネシア産天然アスファルト(AsButon)を鋼床版上のグース混合物として活用するために設計施工方法を整理し、「グースアスファルト混合物としてのAsButon利用マニュアル(案)」を作成
2017年12月
・IREにより上記マニュアルを参考として、インドネシアで初めてAsButonを用いたグースアスファルトの試験施工を実道において実施(写真-2)
2019年3月
・ジャカルタにて、研究協定に関する覚書の締結、今後の研究連携内容に関する意見交換を実施(写真-3)
写真-1 鋼床版舗装の試験施工 写真-2 インドネシアでの試験施工 写真-3 WSの様子
写真-1 鋼床版舗装の試験施 写真-2 インドネシアでの
試験施工
写真-3 WSの様子

トンネル

「トンネル」に関するIREとの活動経緯

  • 研究内容(背景・目的)
     インドネシアでは、急速な経済成長に対するインフラの拡充が求められています。地下鉄の建設や都市間の道路網整備が進められており、 その中でトンネル建設が計画・実施されてきています。インドネシアは日本と同様に地形・地質条件が非常に厳しいため、 日本のトンネル掘削補助工法等のトンネル技術はインドネシアでの適用性が高いことが想定され、技術協力が有用であると考えられます。 技術協力は国際貢献活動になるとともに、関連技術を有する日本企業のインドネシアにおける事業展開も期待されます。
  • これまでの主な活動
  • 2010年10月
    ・バリでのワークショップにて、日本のトンネル技術紹介、意見交換
    2012年3月
    ・バンドンにて、ワークショップを開催、トンネル建設予定地の現地調査を実施。山岳トンネルの補助工法や付属施設に関するガイドライン整備への技術支援を決定
    2013年10月
    ・東京にてワークショップ開催。小土被り条件下のトンネル設計・施工について意見交換、土木研究所受け入れのIRE研究員の研究成果報告
    2014年10月
    ・ジャカルタにてトンネルセミナーを共催。山岳トンネル、シールドトンネル、および付属施設を含めたトンネル技術全般を解説
    2016年3月
    ・ジャカルタにて、山岳トンネル補助工法ガイドラインに関するワークショップを開催、日本企業の地下鉄シールドトンネル工事見学(写真-1)
    2018年9月
    ・バンドンにて、トンネルセミナーで日本のトンネル技術の講演、インドネシア初の道路トンネル(CISUMDAWU TUNNEL)の現場視察(写真-2)
    2019年3月
    ・ジャカルタにて、研究協定に関する覚書の締結、今後の研究連携内容に関する意見交換(写真-3)
写真-1 シールドトンネル現場視察 写真-2 トンネル現地調査 写真-3 意見交換会(2019.3)
写真-1 シールドトンネル
現場視察
写真-2 トンネル現地調査 写真-3 意見交換会(2019.3)

軟弱地盤(泥炭地盤)

「軟弱地盤(泥炭地盤)」に関するIREとの活動経緯

  • 研究内容(背景・目的)
     インドネシアには、20万km2にも及ぶ広大な熱帯性泥炭地盤(トロピカルピート)が分布しています。 現在、インドネシアの国家プロジェクトとして、泥炭地盤上の大規模な道路建設プロジェクト(例えば、スマトラ縦断高速道路では、総延長2,700kmの約1/2の延長が泥炭地盤上に建設される予定)が 計画されていますが、泥炭地盤は高有機質で特殊な性質を持つ軟弱地盤であり、プロジェクトの円滑な実施に向けてガイドライン等の整備や地盤改良技術の確立が喫緊の課題となっています。
     一方、我が国では、北海道に広く泥炭地盤が分布しているため、寒地土木研究所(所在地:札幌市)では泥炭地盤に関する研究・技術開発を長年にわたり実施してきており、 豊富な知識、技術等を有していることから、2014年にIREと研究協力協定を締結し、泥炭地盤における道路建設に関する技術協力を実施してきています。 寒地土木研究所の持つ技術を活かした国際貢献活動であるとともに、新しい研究テーマやフィールドの開拓にも資するものと考えています。
  • これまでの主な活動
  • 2014年6月
    ・IREにおいて「泥炭地盤に関するセミナー」を開催
    2014年10月
    ・研究協力協定を締結
    2016年3月
    ・ジャカルタ市において「泥炭地盤に関するワークショップ」を開催
    2017年5月
    ・スマトラ島において泥炭地盤の合同地盤調査」を開催
    2018年11月
    ・第20回東南アジア地盤工学会議において、連名の論文を発表
    2018年11月
    ・IREにおいて「セメント安定処理に関するワークショップ」を開催
IREでのワークショップにおける意見交換 スマトラ島での合同地盤調査
IREでのワークショップにおける意見交換 スマトラ島での合同地盤調査