様々な自然・地勢条件下での長期の統合的水資源管理を支援するシミュレーションシステムの開発に関する研究

研究の背景

適正な水資源管理や気候変動に伴う水資源への影響評価を行うためには、融雪やダム操作機能を考慮した長期的な水収支計算を精度よく実施できるツールが必要である。

また、多様な国際ニーズに対応するためには、アジア・モンスーン地域はもとより、熱帯、乾燥帯・半乾燥帯など多様な気候や高標高の積雪・氷河地域など様々な自然・地勢条件下での河川流域においてもシミュレーション可能なモデルが必要である。

研究の目的

以上を踏まえて、WEB-DHM、LDAS-UT、IFAS、RRIによる長期流出・土壌水分量変化の解析・予測のための研究・検証を行い、開発された機能を用いて、国内外流域への適用を進めていく。

研究期間

平成28~32年度

研究担当者

上席研究員伊藤 弘之
主任研究員 菊森 佳幹、Abdul Wahid Mohamed Rasmy、望月 貴文
専門研究員 牛山 朋來、Maksym Gusyev、原田 大輔、玉川 勝徳、筒井 浩行、Ralph Allen Acierto、
柿沼 太貴、会田 健太郎
交流研究員 中村 要介

達成目標

  1. 統合的水資源管理のための機能強化
    ダム統合運用のモデル化、ダム運用ルールが明らかでない国外ダム運用のモデル化、渇水時の取水制限の再現といった、総合的な治水・利水運用の再現や農地等の水需要の設定により、河川計画や管理計画、ダム運用、避難計画作成のための解析ツールとしての有用性を向上し、気候変動影響予測等への活用性を向上させる。
  2. 衛星観測データによる土壌水分量の検討
    人工衛星により観測された土壌水分量が、水文流出モデルのパラメータに反映されることで、長期流出の再現性が向上し、水資源管理の解析のための適用性を向上させる。また、モデルにより表現される渇水指標を明確化することで、河川管理者、各種の水利用主体がシステムの信頼性等を考慮した上で、意志決定を行うための重要な判断材料とする。さらに、より詳細な物理過程を表現する水文流出モデルと再現性を比較することで、操作性に優れるIFASの特徴を活かしつつ、長期的な水資源管理への適用を図る。
  3. 様々な気候区分を有する国内外の河川を対象とした適用性向上
    融雪量や蒸発散量がより精度良く再現できるように改良することで、様々な気候区分、土地条件の流域への適用性が広がる。また、気候区分、土地条件に応じて、流出モデルの標準的なモデルパラメータが設定されることで、パラメータ決定に必要な、水文観測網や地質情報の乏しい流域においても、精度良い流出解析が可能となる。また、これまで主に対象としていた、アジア・モンスーン地域以外の乾燥地等への適用性が向上し、世界の水災害の軽減に寄与する。国内で充実している地形、地質データを有効活用することで、国内における適用性を向上させる。国内河川の適用性の向上により、国内における分布型流出解析モデルの学習用や、構築された他モデルの検証用としても、より広く活用を図る。

研究説明資料