センター長からのメッセージ

持続可能でレジリエントな道筋への移行

 2015年9月の国連持続可能な開発サミットにおいて合意された2030アジェンダの前文では、「我々は、世界を持続可能でレジリエントな道筋に移行させるために緊急必要な,大胆かつ変革的な手段をとることに決意している。」と記されている。

 環境と開発に関わる南北問題対立の解決の糸口を見出すために、「持続可能な開発」という新しい概念が、1987 年に国連環境と開発に関する世界委員会(通称、ブルントラント委員会)によって提示された。これは、「将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすような開発」と定義され、その後の四半世紀の議論を経て、17の目標と達成状況の指標が定められるに至った。

 重篤な精神障害で厳しい逆境に直面しながらも適応的に生活できる患者を理解する概念として、心理学の分野で「レジリエンス」が注目され始めたのは1970年代であった。災害分野では、「困難な事態に対して備え・計画し、影響を緩衝し、回復・適応する能力」と定義されている。レジリエンスを計量する手法としては、衝撃の吸収力、変化への適応力、状況の変化に対して自己変革する能力や、災害によって失われた社会の機能を回復していく過程で、その失われた機能を時間的に積分した値の定量化が提案されている。

 持続可能性とレジリエンスの関連性については、持続可能性が比較的時間軸を長くとって将来の成果に重点を置いているのに対し、レジリエンスは直面している事象を対象としてその取り組み過程に重点を置いているという見方がある。一方、脆弱性、包摂性、変容可能性等、両者に共通して見られる特徴もある。移行すべき道筋の設計とその実施において、持続可能性とレジリエンスの相互関連性の本質的理解が求められる。

2021年10月29日
水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)センター長
小池 俊雄