統合的気候モデル高度化研究プログラム

ICHARMによる研究成果

成果報告書
(出典:「統合的気候モデル高度化研究プログラム 統合的ハザード予測 令和3年度研究成果集」pp.177-217、文部科学省研究開発局、2022)

〇「統合的気候モデル高度化研究プログラム 令和3年度 研究成果報告会」
(2022年2月3日(木)) アーカイブ動画(YouTube)
(出典:文部科学省統合的気候モデル高度化研究プログラム、2022)

研究の背景

ここ数年において、国際社会は気候変動対策で大きな進展を見せています。2015年12月には、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)が開催され、世界的な平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃未満に抑えることを目標とし、同時に1.5℃に抑える努力を行うこと、気候変動に対する適応能力を向上させることを掲げた「パリ協定」が採択され、2016年11月4日に発効いたしました。2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」においても、2030年に向けた17の目標の一つに気候変動対策が明記されています。また、気候変動に関する最新の科学的知見を評価する「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」も、第6次評価報告書の作成に向けて始動しました。

一方、国内においても気候変動対策が進みつつあります。日本政府は、気候変動の影響による被害を最小化あるいは回避し、持続可能な社会を構築するために、2015年11月に「気候変動の影響への適応計画」を閣議決定しています。このように国内外で気候変動対策の必要性が高まる中、将来を見通し、実効的な対策を進めるためには、最先端の科学技術を駆使した気候変動予測の研究が極めて重要です。加えて、その科学技術をもって気候変動外交における我が国のプレゼンス向上と国内の気候変動対策に引き続き貢献していくことも、我が国の政策上必要なことです。

そこで、文部科学省では、気候変動研究の更なる推進とその成果の社会実装に取り組むべく、「気候変動リスク情報創生プログラム」(平成24~28年度)の成果を発展的に継承しながら、4つの研究領域テーマを連携させた統合的な研究体制を構築し、気候変動メカニズムの解明、気候変動予測モデルの高度化や気候変動がもたらすハザードの研究等に取り組み、高度化させた気候変動予測データセットの整備に挑みます。

以上、統合的気候モデル高度化研究プログラムホームページより引用)

4つの領域テーマ

「統合的気候モデル高度化研究プログラム」では、住 明正教授(文部科学省技術参与、東京大学 サステイナビリティ学 連携研究機構 特任教授)がPD(プログラム・ディレクター)の任を担い、事業統括としてプログラムを効率的・効果的に運営し、全体調整を図ります。

また、以下4つの領域テーマが設定され、領域テーマ毎にPO(プログラム・オフィサー)が配置され、研究課題の進捗管理、研究計画の調整等、PDの役割を補佐します。

テーマ名領域代表者PO
(プログラム・オフィサー)
領域テーマA全球規模の気候変動予測と基盤的モデル開発渡部 雅浩
東京大学大気海洋研究所
教授
木本 昌秀
文部科学省技術参与
東京大学大気海洋研究所
副所長・教授
領域テーマB炭素循環・気候感度・ティッピング・エレメント等の解明 河宮 未知生
海洋研究開発機構
気候モデル高度化研究プロジェクトチーム
プロジェクト長
領域テーマC統合的気候変動予測 高薮 出
気象業務支援センター
領域テーマD統合的ハザード予測 中北 英一
京都大学防災研究所
教授
原澤 英夫
文部科学省技術参与
国立環境研究所 理事

領域テーマDの研究の趣旨

領域テーマD「統合的ハザード予測」では 、高精度化された気候変動予測情報を受け取るハザードモデルについて、モデルの高度化、高解像度化、日本全域へのハザードモデルの最適化などの研究開発を行います。開発されたハザードモデルをもとに、台風や豪雨などの極端現象等に関するハザードについて、その頻度や最大クラスの強度評価も含めた将来変化予測を行います。 また、自然災害や水資源を対象に、時系列を考慮して現在から徐々に進行していくハザードの将来変化の時系列についての研究を実施します。

さらに、過去のハザードの条件データ収集や再現及びその要因分析についても検討します。影響評価に加えて、適応策の開始時期や効果を評価するような方法、その影響を左右する社会経済的要因も考慮に入れた適応策評価についての研究を実施します。加えて、アジア諸国等との連携研究を通じてハザード予測技術を世界に向けて展開するための土台構築に取り組みます。また、バイアス補正や極値統計などの手法を一般化するための取組について検討します。

ICHARMの役割

ICHARMは、この領域テーマD「統合的ハザード予測」における領域課題の一つ、「4. ハザード評価のアジア・太平洋諸国への展開と国際協力」(サブ課題代表者:立川 康人(京都大学工学研究科 教授))において、「4.1. 東南アジア・太平洋域を対象とする水災害ハザード変化予測」を実施します。

具体的には、インドネシア国ソロ川流域、およびフィリピン国ダバオ川流域を対象流域とし、現地政府機関の適応策検討に資する有益な情報提供(リスク評価結果、投資効果、適応策オプション、ロードマップの作成等)及び活動支援を実施し、他国にも適用できる適応策検討ガイドライン作成(プロトタイピング)及びガイドラインの普及に努めることとしています。

※「統合的気候モデル高度化研究プログラム」の詳細は、以下公式ホームページをご覧ください。
http://www.jamstec.go.jp/tougou/index.html