フィリピン共和国における地球規模課題対応国際科学技術協力
プログラム(SATREPS)の研究プロジェクト事業開始のお知らせ

 土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)は、東京大学、東北大学、滋賀県立大学、名古屋大学、京都大学とともに、国際協力機構(JICA)、科学技術振興機構(JST)による「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)」の防災部門の研究課題「気候変動下での持続的な地域経済発展への政策立案のためのハイブリッド型水災害リスク評価の活用/Development of a Hybrid Water-Related Disaster Risk Assessment Technology for Sustainable Local Economic Development Policy under Climate Change(課題名の略称:HyDEPP)」を実施しています。

 SATREPSとは、開発途上国の研究者と共同で行う研究プログラムで、日本国内ではJST事業として、相手国内ではJICAによるODA事業として実施されます。プログラムを通して、日本と開発途上国との国際科学技術協力の強化、地球規模課題の解決と科学技術水準の向上につながる新たな知見や技術の獲得、これらを通じたイノベーションの創出、キャパシティ・ディベロップメントを達成することを目的としています。本研究課題はフィリピン共和国を対象としており、日本国側研究代表機関は土木研究所ICHARM、相手国側研究代表機関はフィリピン大学ロスバニョス校(UPLB)です。

 日本国内でのJST事業としては、2019年度における1年間の準備期間の後、2020年度からの5か年間の研究活動を開始していました。全世界的な新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、フィリピン共和国国内でのJICA事業の開始を延期していましたが、2021年6月3日から現地での5か年間のJICA事業を開始しました。これに伴い、本研究課題専属のJICA業務調整員が配置され、同日に現地に着任いたしました。

 フィリピン共和国のマニラ首都圏及び近郊は、2020年11月12日の台風Ulyssesにより甚大な被害を受けました。将来の気候変動による更なる水災害の頻発により、地方都市の持続的な発展が阻害され、マニラ首都圏への更なる一極集中が進むことが懸念されています。本研究課題は、マニラ首都圏近郊のパンパンガ川流域およびパッシグ・マリキナ川・ラグナ湖を対象として、従来の気候変動・水理水文・農業・経済活動モデルを結合させたハイブリッド型モデルを用いた水災害リスク評価に基づき、分野横断型のアプローチにより、気候変動下での都市と農村における持続可能な経済発展のための政策提言を行うことを目的とします。これらの政策提言により、フィリピン共和国内の水災害レジリエンスの向上と均衡のとれた国土発展による持続可能な経済発展への貢献を目指しています。

 新型コロナウイルス感染症の影響により、まだ当面はオンライン会議中心の活動が続きますが、両国のメンバーで連携しながら、研究プロジェクトを進めて行く予定です。研究プロジェクトの概要は下記のページで参照できます。

URL:https://www.pwri.go.jp/icharm/research/articles/project-HyDEPP-SATREPS_j.html
JSTの研究課題のページ:https://www.jst.go.jp/global/kadai/r0109_pilipinas.html

図1 2020年12月2日のフィリピン・日本両国のメンバーによるオンライン準備会合<br>(画面に出ているのは参加者の一部)
図1 2020年12月2日のフィリピン・日本両国のメンバーによるオンライン準備会合
(画面に出ているのは参加者の一部)
 
図2 2019年9月のフィリピン大学ロスバニョス校での準備会合の際の集合写真
図2 2019年9月のフィリピン大学ロスバニョス校での準備会合の際の集合写真