土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター（ICHARM）は、東京大学、東北大学、滋賀県立大学、名古屋大学、京都大学とともに、国際協力機構（JICA）、科学技術振興機構（JST）による「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム（SATREPS）」の防災部門の研究課題「気候変動下での持続的な地域経済発展への政策立案のためのハイブリッド型水災害リスク評価の活用/Development of a Hybrid Water-Related Disaster Risk Assessment Technology for Sustainable Local Economic Development Policy under Climate Change（課題名の略称：HyDEPP）」を実施しています。
SATREPSは、開発途上国の研究者と共同で行う研究プログラムであり、日本国内ではJST事業として、相手国内ではJICAによるODA事業として実施されます。本研究課題はフィリピン共和国を対象としており、日本国側研究代表機関は土木研究所ICHARM、相手国側研究代表機関はフィリピン大学ロスバニョス校（UPLB）です。日本国内でのJST事業としては、2019年度における1年間の準備期間の後、2020年度からの5か年間の研究活動を開始していました。全世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、フィリピン共和国国内でのJICA事業の開始を延期していましたが、2021年6月3日から現地での5か年間のJICA事業を開始しました。
2021年6月30日午前に、日本・フィリピン両国の研究参画機関、連携機関、JICA・JSTの参加のもと、本研究プロジェクトのオンライン・キックオフ会議を開催しました。会議には約100名が参加し、第1セッション：Opening Session, 第2セッション：Science and Technology Session、第3セッション ：プロジェクト関係者のみによるBusiness Meetingという3部構成で開催されました。
第1セッションでは、UPLBのDr. Jose V. Camacho, Jr.学長、本研究課題のProject Directorの Fernando C. Sanchez, Jr.教授（UPLB）、JICAフィリピン事務所の大島歩次長、日本側のProject LeaderのICHARM大原美保主任研究員が開会の挨拶を行いました。続いて、大原主任研究員及びProject ManagerのPatricia Ann J. Sanchez教授（UPLB）が研究プロジェクトの目的や計画の概要を説明しました。本研究課題は、マニラ首都圏近郊のパンパンガ川流域およびパッシグ・マリキナ川・ラグナ湖を対象として、従来の気候変動・水理水文・農業・経済活動モデルを結合させたハイブリッド型モデルを用いた水災害リスク評価とこれを用いた事前の防災投資の客観的評価に基づき、分野横断型のアプローチにより、気候変動下での都市と農村における持続可能な経済発展のための政策提言を行うことを目指しています。
第2セッションでは、グループ１（データの収集・統合化）、グループ２（洪水・渇水リスク評価）、グループ3（水災害レジリエンス評価）、グループ4（持続可能な経済発展シナリオの検討）という4つのグループのリーダーが、詳細な研究計画の発表を行いました。続いて、大原主任研究員より、2021年7月中旬からのeラーニング研修や今後の予定について説明がありました。その後、JSTの浅枝隆Research Supervisor、JICA地球環境部防災グループの中村覚課長、ICHARMの小池俊雄センター長、共同研究機関および連携機関の代表者から、本研究プロジェクトへの期待が表されるとともに、今後の活動などへのコメントをいただきました。閉会の挨拶では、浅枝Research Supervisorから、共同研究を推進する上での両国の更なる連携への期待が寄せられ、第2セッションを終了しました。
第3セッションは、プロジェクト関係者のみのBusiness Meetingとして開催し、今年度の詳細な研究活動計画、各研究機関の役割分担、各グループ内でのユニットチームの構成などについての協議と確認が行われました。
新型コロナウイルス感染症の拡大により、引き続き、フィリピン共和国への渡航や現地調査などが実施できない環境ではありますが、両国メンバーで連携しながら、共同研究を進めていく予定です。
研究プロジェクトのURL：
URL: https://www.pwri.go.jp/icharm/research/articles/project-HyDEPP-SATREPS_j.html
 キックオフ会議参加者による集合写真 |