世界銀行グローバル水本部長との意見交換を実施しました

 2023年11月20日、特定非営利活動法人 日本水フォーラム協力のもと、世界銀行グローバル水本部から、サロージ・クマール・ジャー本部長、サラ・ネドラスト プログラムマネージャー(グローバルセキュリティ・衛生パートナーシップ)、アイリーン・ブルケ グローバル・リード(水資源管理担当)の3名が土木研究所を訪問し、意見交換(第一部・第二部)を行いました。なお、ジャー本部長は、水・防災分野の専門家であり、日本政府も支援している世界銀行防災グローバルファシリティ(GFDRR)の創設に携わった経験もお持ちです。

 第一部では土木研究所藤田理事長、ICHARM小池センター長、国土交通省水管理・国土保全局河川計画課国際室小浪室長をはじめとする日本側関係者と意見交換を行いました。まず、小池センター長からICHARMの活動紹介を行い、次いで世界銀行の参加者から質問やスピーチが行われました。ジャー本部長からは以下の言及がありました。

Mr. Saroj Kumar Jha
Mr. Saroj Kumar Jha
Ms. Eileen Burke
Ms. Eileen Burke
Ms. Sarah Nedolast
Ms. Sarah Nedolast

  • 日本は、第二次世界大戦後に世界銀行や他国からの支援により自ら復興を成し遂げただけでなく、その経験を他国と共有する点で世界的なリーダーとなった。世界銀行は日本に対して絶大な尊敬を抱いている。
  • アフリカでは、多くの人が、飲み水や衛生的な水にアクセスできない。2030年までに東南アフリカだけでもそのような人は1億人に達すると予想している。
  • 今、世界銀行の新しいビジョンは「world free of poverty on a livable planet」である。「livable planet」とは、清潔な飲み水や灌漑にアクセスでき、極端な洪水、渇水などもない場所である。
  • 世界銀行グループの新しいビジョンの概念には、以前にはなかった水が含まれている。世界銀行の6つの世界的課題の一つは、水の安全保障(water security)である。また、水の安全保障危機や水アクセスの危機を悪化させている気候変動の問題でもある。
  • 世界銀行だけが水を優先事項に位置づけても、途上国の政治的指導者が水を優先事項にしない限り意味がない。
  • すべての国の政府が水への投資を増やすなど水への取組をさらに強化する必要があるが、より重要なことは、可能な場合には水部門により多くの民間部門の資金を導入することを支援することである。民間資本がなければ水の安全保障問題を解決することはできない。

日本側参加者
日本側参加者
小池センター長からの発表
小池センター長からの発表

 上記発言に対し、小浪室長からは、「多くの国において水は重要。この分野で日本と世界銀行が協力することにより、水の重要性に対する日本側の認識の高さを世界に示すとともに、日本国内の一般市民に対しても、水の重要性への認識が高まる。」と発言され、藤田理事長からは「技術だけではなく、政治プロセスが非常に重要だというお話が非常に印象に残った。技術的側面と政治的側面の両方が必要であることは明らかであり、それらの間にどのような相互作用が存在するかが、我々が実施できる最も重要なシミュレーション要素であるように思った。このような相互作用については、技術的な側面に焦点を当てるだけでなく、政治的なマネジメントも同時に考慮する必要があるため、さらに研究したい。」との発言がありました。

集合写真(第一部)
集合写真(第一部)
ICHARM学生との意見交換
ICHARM学生との意見交換

 第二部では、世界銀行側とICHARMの博士学生10名・修士学生13名が参加する意見交換を実施し、うちアフガニスタン、モロッコ、ネパール、フィリピン、スリランカ各国の学生が代表して発表を行いました。彼らは、自国における世界銀行の協力に感謝を示しつつ、自らがICHARMで行っている研究活動を紹介し、本部長からアドバイスを受けていました。

 特に最初に博士課程1年のブラマンド氏(アフガニスタン)が、自国の洪水被害の現状、特に技術者やデータが不足している状況を説明しました。偶然にもJha氏は最近カブールにおける水資源開発プロジェクトにかかわっていることから、イラン、パキスタンなどと流域を接するアフガニスタンの水文関連の研究が少ないことが問題であり、また、水というのは科学技術だけでなく政治的問題でもある等の深い議論がなされました。

 そして、「世界銀行は、あなた方の組織である」と激励していただきました。

集合写真(第二部)
集合写真(第二部)