2024年度のNEDO懸賞金活用型プログラム(衛星データを活用したソリューション開発)において、水災害・リスクマネジメント国際センター研究チーム(応募代表 玉川勝徳専門研究員(当時、現東京大学地球環境データコモンズ所属)(以下ICHARMという))が審査委員特別賞を受賞しました。NEDO懸賞金活用型プログラムは、コンテスト形式による懸賞金型の研究開発方式を採用し、技術課題や社会課題の解決に資する多様なシーズ・解決策を募り、将来の社会課題解決や新産業創出につながるシーズをいち早く発掘することを目指しています。今回の審査員特別賞は、衛星データの活用により、将来的に課題解決への貢献が特に見込まれると審査委員が認めたものとして授与されました。
ICHARMは、「降雪・積雪・融雪量」のリアルタイム解析プラットフォーム構築~高精度、高時間、高空間分解能で日本から世界へ~」というタイトルで、テーマ「エネルギーマネジメント基盤構築」に応募しました。「雪」は、エネルギー資源、水資源、観光資源として人々にとって身近な存在であるにも関わらず、地上の観測体制が充実している日本でも定量的にリアルタイムに状態量を把握するのが困難な存在です。アジアや南米などの雪氷圏ではさらに難しい状況です。そこで、衛星観測データ(GSMaPの降水データ、MODISの葉面積指数、積雪域データ)、地上観測の流量データ、数値気象モデル出力(再解析データ)をデータ統合・解析システム(DIAS)上で統合・解析し、降雪量、積雪量、融雪量を物理的に解き、時空間的にリアルタイムに把握可能な解析プラットフォームの構築を提案しました。これは、ICHARMの主要研究「洪水予測に基づく既設ダム等の治水機能の強化・発現技術に関する研究」を基礎とし、融雪流出を予測した水力発電ダムの運用の高度化、発電量の増加が期待できるものです。日本の流域で主に開発・検証してきた雪水文モデルをさらに世界で使用できるようにするため、今回はブータン国の標高4000~6000mに位置する積雪流域を対象に開発・検証を行いました。このような高標高域に適用するためには、氷河モデルの導入、植生域の実態把握、蒸発散計算での飽和水蒸気圧の調整等、雪水文モデルの精緻化が必要となり、Mohamed Rasmy主任研究員が大きく貢献しました。
本開発・検証で、不確実性の高い衛星観測の降水情報を「降雪のシグナル」ととらえ、高標高域にも適用可能な精緻化した雪水文モデルを開発し、実観測から得られる積雪域や流量と比較検証する手法も確立させることで、これまで不可能であった高山域を含む世界中での「降雪量」を推定することが可能となりました。
なお、今回授与された懸賞金は、全額土木研究所に寄付され、ICHARMの研究開発に活用されることになります。
NEDO 懸賞金活用型プログラム
https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100268.html
衛星データを活用したソリューション開発
https://space-data-challenge.nedo.go.jp/green_earth/index.html
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