フィリピンHyDEPP-SATREPSプロジェクト訪日研修

 ICHARMは、国際協力機構(JICA)および科学技術振興機構(JST)のSATREPS事業(地球規模課題対応国際科学技術プログラム)として進めている研究プロジェクト「気候変動下での持続的な地域経済発展への政策立案のためのハイブリッド型水災害リスク評価の活用(研究代表者:大原美保東京大学教授、プロジェクト略称:HyDEPP-SATREPS)」に協力しています。このプロジェクトの一環として企画された訪日研修に参加するため、2026年2月24日から3月3日の間、フィリピン側のプロジェクト関係者13名が日本に滞在しました。

 この研修の主な目的は、日本の優れた水文・農業施策に関する現地視察と、プロジェクト最終成果報告会への出席です。2月25日~26日には、大原教授、ICHARMの南雲直子専門研究員ら日本側研究とともに、フィリピン大学ロスバニョス校の研究者と、ラグナ湖開発公社の実務者が宮城県大崎市を訪問しました。大崎市は「大崎耕土」と呼ばれる広大な水田地帯を有し、伝統的な水管理システムや生態系の維持、水田における洪水貯留など、流域治水を先進的に進めていることで知られています。今回の視察は、大崎市役所、北上川下流河川事務所、鶴田川沿岸土地改良区の協力により実現したもので、まず、伊藤康志大崎市長を表敬訪問した後(写真1)、「居久根」と呼ばれる屋敷林を備えた伝統的な家屋や、ラムサール条約登録湿地である化女沼を訪問しました。そして、その翌日には、鹿島台地区の二線堤や、排水目的で掘削された元禄潜穴、前川承水路などの様々な施設を視察しました(写真2)。また、2月28日には、茨城県霞ケ浦環境科学センターを訪問し、霞ケ浦の生態系や歴史、水質管理や研究・環境保全活動について学びました(写真3)。

 3月2日の研修修了式において、フィリピン人メンバーに現地視察で感じたことを尋ねたところ、大崎市で洪水管理が農業の基盤となっていること、治水・利水において伝統知と近代技術が両立していること、また各組織が同じ目標に向かって協力している点に感銘を受けたとのコメントが述べられました。また、これらの事例をフィリピン大学の授業で紹介し、日本の取り組みを学生にも学んでもらいたいとの声も聞かれました。さらに、霞ケ浦は浅く、水質汚濁や洪水の歴史がある点など、プロジェクトの対象地域の一つであるラグナ湖とよく似ており、水質の観測や調査研究、環境保全のための取り組み、博物館を活用した情報発信などが非常に参考になるとのコメントも寄せられました。

 また、2月27日には、東京大学で「気候変動下での持続的な地域経済発展策の共創:HyDEPP-SATERPS フィリピン最終成果報告会」が開催され、フィリピン人メンバーは本プロジェクトの最終成果の一つである政策提言作成の背景やその作成過程について発表を行いました。ICHARMからは、Ralph Acierto専門研究員が気候変動予測について、Mohamed Rasmy主任研究員が気候変動下での洪水・渇水評価について、研究成果を紹介しました(写真4)。

 今回の研修は、本プロジェクトにおける最後の訪日研修となりましたが、治水・利水や農業に関する日本の好事例を紹介することができ、充実した研修となったと手応えを感じています。ICHARMでは、2026年5月のプロジェクト終了まで、フィリピン側メンバーと協力しながら、引き続き成果の取りまとめおよび発信に努めてまいります。

写真1
写真1 大崎市長らとの集合写真
写真2 写真2 写真2
写真2 大崎市の現地視察の様子
写真3 写真4
写真3 霞ケ浦での集合写真
写真4 東京大学での最終ワークショップの様子